墨と米が、なぜ「め」なのか

 ややこしいタイトルになってしまったが、墨西哥(めきしこ)の墨が「め」であることと、亜米利加(あめりか)の米が「め」であることの謎を考えてみた。考えたり調べたりしながら書いてみたのだが、最後のほうで、不完全ながらもいちおう結論にたどり着いた。

 まずは、調べていたリンクの順序を追って、書いてみる。

 亜米利加も、19世紀中頃までの日本では墨西哥と同じく墨を使い、亜墨利加と書くことが一般的だったようだ( → 国際基督教大学レポジトリ内、1999年 アメリカの漢字表記「米国」の成立をめぐって)。その後、米の字の使用例が増えていくという。

 大きなファイルなので、ここで冒頭のみ読んでから、ほかの検索も開始。以下はその経緯。

 こちらのサイト(レファレンス協同データベース https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000014416)にも、使いはじめた年代はわかるが語源はわからないとある。

 いや、しかし、墨も米も、そもそも「め」の音が、あったのだろうか。
 メートルや平米などには現在も米が使われていて、これも音から由来の「め」なのだろうと推測するが、手近な辞書やオンライン解説を読んだでは、墨にも米にも「め」の読みはなかった。意味としての米国を紹介するものはあったが、それは「意味」であり、きっかけになったはずの「音」ではない。

(参考: goo 辞書 – 日本漢字検定協会 漢字ペディア「」、「」)

 日常生活に深く根ざした漢字であるのに、使われ出したきっかけがよくわからないのは、不思議である……

 あっ…
 待てよ!?

 どうやら墨西哥(メキシコ)は、中国語でそのままの漢字を使うようだ。つまり音ではなくて漢字で輸入したということなのか。では、「米」もそうなのか…!?

 …と思ったのだが、中国語では米は「ミ」らしい。広東語では「マイ」だが、ほかの中国語でも、多くが「ミ」のようだ。

 ちなみに現在の中国語では、米国はメイクォ(美国)である。それについても「なんでよりによって美国なんだろ」というのは、やはり話題になるらしい。英語で検索してみたところ、 medium.com に記事があった → 2015.01.20 Why do Chinese translate America as “The Beautiful Country?”

 …これをあとで読んで、今日は終わりにしようか…と思ったら、この文章の後半に日本での「米国」のヒントが!?

 魏源(ぎげん Wei Yuan)や、徐継畬(じょけいよ Xú Jìyú)の書が、ペリー来航のころ、すでに日本で出まわっていたため、亜米利加が使われるようになった、との表現を発見。

 これを拝見したかぎりでは、当時の人が「米」を「め」と日本語で読んでいたのではなく、中国の書籍からはいってきた、と考えるのが、自然のようだ。

 ここであらためて、冒頭に紹介した国際基督教大学レポジトリのPDFファイルにもどり、「魏源」で検索をかけてみた。すると、魏源の著した「海国図志」について解説があった。

 毎度のことだが、長い資料をぜんぶ読まずにとっつきやすいところだけ読んだのちネットを検索しに出かけ、最後に同じ資料をふたたび読むところが、いかにもズボラなわたしらしい行動である——。とりあえず、黒船以降に「亜米利加」の使用例が増えたのは、魏源の影響と考えてよさそうだ。

 それにしてもこのPDFファイルは、まだ半分も残っている。読み終えていない。だが自分の目的「いつから日本ではコメが使われているか」は、上記の「海国図志」について書かれた場所からまもなくの位置にあったので、それを紹介して今日はひとまず終わりにしよう。

 ジョン万次郎のことと思われるが、漂流民から聞きとったアメリカの事情をまとめた記録が、「憂天生」という人物の手により残されているという。そこには現在の「米」に相当する言葉を使った、米人や米英という言葉が多く記されているそうだ。

 この記録や、海国図志の影響で「米」の字の使用が広まり、一般的になっていった、と考えてよさそうだ。また発見があった場合には、追加編集をさせていただこう。

ケーキ難民という表現

 今年は自宅で静かにクリスマスを迎えるという人が多いそうで、わたしがネット上で親しくしている菓子店のみなさんも、「いつもならクリスマスの数日前まで予約を取るのに、今年はとてもではないが、早めに締め切らねば」と書いていらっしゃる事例が多いように感じていた。

 さて、夕方たまたま見ていたテレビ番組で、予約をしていなかったのでケーキが買えない「ケーキ難民が、今年はたくさん出た」との表現に遭遇。

 いや、ちょっと待て。難民をそんなに軽く使っていいのか。難民だぞ?
 そして、買えなかったのは、たかだかケーキだぞ?

 ここで、ひと言…
 テレビ局のみなさん、あなたがたは影響力があるのですから、その点を忘れず、言葉選びに慎重になってもらえませんか。
 …ひと言、終わり。

 嘆かわしい。面白おかしいニュースに使う言葉なのかと、情けなく思う。

趣味はhobbyとはかぎらない

 先日Facebookで、”It doesn’t float my boat.” を、ほかの言語ではどう言うのかという話が出ていた。たとえばイギリスなら “It’s not my cup of tea.” であり、要するに「好みではない」、「それでは気分が乗らない」といったところだ。

 そのとき、わたしも参加しようとして「趣味じゃない」を英語でどう表現するか、ちょっと考えてしまった。その「趣味」は、hobbyではない。hobbyとは、履歴書などに「趣味欄」があった場合に書く内容であるが(たとえば写真撮影とか、映画鑑賞)、この「趣味じゃない」のほうは、好みとか、気分であって、多くの場合は否定形、または肯定文であってもひねくれたニュアンスを持つ場合がある。
(たとえば「趣味がいいですね」やら、「よいご趣味で」と言われたら、ストレートに褒めているとは考えにくい)

 で、あれこれ考えて It’s not my taste. と表現するしかないだろうと考えた。ねんのためにネットで検索すると、天下のGoogleが提携しているOxford Languagesでは、趣味はこう定義されているらしい。

(下の画像は、Googleで「趣味 意味」と検索すると表示されたもの)

趣味の定義

 Oxford Languagesというものが、ここまでこなれた日本語を提供しているとは意外だったが、まさに我が意を得たりの気分で、読んですっきりとした。

 いっぽう、英語のhobbyは、この定義のうち前半のみをカバーするので、2の意味の日本語にhobbyという英語をあてるのは間違いであり、誤解の元となるが、日本語ネイティブでなく初期の学習者のレベルであれば、単純に「趣味=hobby」と、置き換えて考えてしまうこともあるかもしれない。

 

呼び名は「ハーゲン」だと思っていた

 今日、ネットで美味しそうなハーゲンダッツの写真と一緒に、知人が「ダッツ」と書いていたので衝撃を受け、いったんは見なかったことにしようと考えた。だがやはり気になって、さっきから検索をしていたのだが…

 あの呼び名は「ハーゲン」だと思っていたし、ダッツは聞いたことがなかったが、ネットではダッツの人もいて、さらに(冗談かと思うが)「ハゲ」などの説もあるらしい。

 ハーゲンは、あまり多くないようだ。

 う〜。。。世の中みんな「ハーゲン」だろうと思っていたので、それ以外の候補があったことすら知らなかった。

 さて、ハーゲン買ってこよう。
 
 

 
 見たからに、美味しそうだ。

新語大賞は「ぴえん」

 驚いた。新語大賞がぜんぜん聞いたことのない言葉だったことよりも、最初に読んだオリコンニュースで「ぴえんとは何か」がいっさい書かれておらず、記事はただ新語を並べて、終了していたことだ。

 いや、これ、解説するだろ!? これで終わられたら困るんだ。聞いたことないぞ、ぴえん。

 2020.11.30 Oricon News → 今年の“新語”大賞は「ぴえん」 新型コロナ関連のワードも続々トップ10入り

 だが、さすがにわたしのような年齢の読者が多いと思われる朝日新聞には、説明があった → 新語大賞は「ぴえん」 ベスト10に「密」「リモート」

 「ぴえん」の語釈として「小声で泣きまねをするときの言葉」「困ったり、思い通りにならなかったりして、ちょっと悲しい気分であることをあらわす言葉」などと説明。例文として「電車に間に合わない、ぴえん」と紹介した。

 なるほど、これは的確な説明だ。わたしも明日から使おう(無理)。

頭の中での、誤変換

 昨日だったか、瞬時とはいえ、不思議な経験をした。

 まず、どこかの食べ物関連サイトで「とてもめずらしい」という表現とともに紹介されていた商品を見たのがきっかけだった。そこにはアルファベットでSAKEICEと書かれていた。

 わたしの頭は、すぐさまそれを鮭アイスと変換した。浮かんだ絵としては、ほぐした塩鮭が、みぞれのような冷たい物体に、まんべんなく混ぜられているのだ。すぐさま「しょっぱそうだな、美味しいのかな」と考えた。そこで普通は酒に軌道修正をする人が多いだろうに、わたしの勘違いはまだつづき、説明文章を読みながら「協力している会社が酒造会社ばかりだ。水産会社がないのはなぜ、鮭なのに」と。

 …さすがにわたしもそこで気づいた。日本酒を使ったアイスクリームという意味らしい、と。最初に気づけよ、の世界である。

 ちなみに、わたしは東京に出てくるまで鮭を「さけ」と読んでいた。こういう人はほかにも多いのではないだろうか。コンビニのCMなどで「シャケおにぎり」という読み方が共通語のように世間に浸透するまで、世の中には「さけ」と「しゃけ」が混在していたように記憶している。

 さらに、アイスという言葉をカタカナで見た場合はアイスクリームまたは氷菓を連想するのだが、アルファベットで見た場合は、ガチガチの氷を思い浮かべる。そこで連想がみぞれに行ってしまったのかもしれない。

 さて、ネタにしてしまったので、SAKEICEさんに敬意を表して、リンクをして終わりにしよう。こちらが公式サイト → https://sakeice.jp/

母語について思う

 数日前、日本語について質問を受けた。似ている単語があったときどう使い分けるのかと。その件はそれほど手こずらなかったのだが、自分なりにその後もあれこれ考えてみた。無意識に使ってしまうことが多いが、言葉というのはつくづくおもしろい。

 気持ちのいい朝だ、とだけ聞けば、天気がよいか何かそういう話だろうと、人は勝手に補って考える。
 気分のいい朝だ、とだけ耳にすれば、やっかいな事情がなくなって息抜きができるのかなと、考える。あるいはこのところ体調を崩していて復調したのだろうか、など。

 気持ちよい店だと聞けば、接客かインテリアがよかったのだろうと思う。
 だがその反対語は「気持ち悪い店」ではなくて、「雰囲気が悪い店」だ。気持ち悪いを使うと、店にとてつもなく問題がある(気味の悪い店主とか!?)というニュアンスにもなりかねない。

 人がおだやかでリラックスしていそうなとき、あの人はご機嫌なようだとは言えても、あの人は気持ちがいいはちょっと言えず(言えても意味が異なる)、あの人は気分がいいもまた、かなり不自然に響く。

 けっきょく言語習得の基本というのは、「場数を踏む」しかないのだと思う。

 わたしなど、何十年も英語を学んでいるつもりでも、それがいまだにできなくて苦労をしているのだが、外国にいながらにしての日本語習得というのは、英語があふれている日本で英語事例を収集するわたしよりもはるかに機会が少なく、ハードルが高いことになる。なんらかの規則性を発見または文法のような理屈づけをしながら頭を整理していかなければ、時間がかかりすぎるのだろう。
 そんなとき、日本語ネイティブである自分にちょっと質問をしてもらうことは、まるでかわないし、むしろ歓迎である。わたしも以前は人に英語を尋ねていたし、恩返しにもなる。

 明日からも気持ちのよい朝をむかえ、日中を気分よく過ごして、穏やかな心で就寝できるよう、適度にがんばっていきたい。(←文法的には問題ないだろうけれど何が言いたいのかよくわからない文章 ^^;)
 

外国人の姓名を日本語にする際のダブルハイフン

 名前や姓を連結して表記している外国人を日本語表記するとき、ダブルハイフンが使われることがある。ダブルハイフンとは、イコール記号に似ているもので、しばしばイコール記号で代用される。

 たとえばWikipediaのダブルハイフンの説明では、例として女優の「キャサリン・ゼタ゠ジョーンズ Catherine Zeta‐Jones」が紹介されている。

 原文のほうにハイフンがはいっている名前をダブルハイフンで表すのは「ふむふむ、なるほど?」と思えるのだが、わたしの長年の疑問は解消されない。それはイギリスの女優 Helena Bonham Carter を、日本語ではヘレナ・ボナム=カーターとしている事例が多いという点だ。
 もともとの名前にハイフンがないのであるから、ダブルハイフンで表記せねばということは、そもそもないはずだ。もしや同氏が以前にハイフン付きで名乗っていたことがあるのかとも考えたが、ざっと検索してみたかぎりでは、そのようなこともなさそうだった。

 なぜ、ないハイフンを補って考えてまで、ダブルハイフンで表現するのか。かなり謎である。

後日追記:
 こちらによると( → Wikipedia: Bonham_Carter_family)、18世紀にカーター家がボナム家の名前を引き継いで複合姓にした、歴史ある名字らしい。最初の時代にはハイフンを入れて名乗っていた方もいらっしゃったようなので、そういった昔からの姓(歴史ある家)という敬意をこめて、ダブルハイフンが慣例として使われてきている可能性は、あるかもしれない。

70年代に、アップルダイエットというものがあった

 いまよりさらに節操のなかった、70年代の雑誌広告欄。10代後半でも読むようなコミック雑誌にも、減量関連の広告や健康食品もどきの情報は、たくさん載っていた。

 わたしは年上の集団の中にいることが多く、それらの人々が読んでいるものを少し遅れてお下がりとして見ることがあったが、広告にあった「アップルダイエット」という言葉は、強烈に印象に残った。それはなんだろう、と。食事の代わりに林檎を食べるとカロリーが抑えられるという話なのだろうが、それがそういう話を書いた本のタイトルだったのか、あるいは林檎の粉末でも売っていたのか、そこまでは覚えていない。

 ただ、日本語の「ダイエット」が、英語で痩せるという意味だと勘違いしてしまう人が現在でもたくさんいることは、このときのアップルダイエットという言葉が、少なからず影響してきたと考えている。ダイエットという言葉そのものを知らない人も、多かったはずの時代だ。痩せるという意味なのだと、思ったのだろう。

 先日もちょっと驚いてしまったのだが、知人がリンクで紹介していたストレッチの動画に、動画を作成しているご本人が、英語としてdietという言葉を添えていた。これは英語圏の人が読んだら「食事で体重を落とす動画かな」と勘違いしてしまうことだろう。dietは、食事で体調を整える(結果として痩せることもある)という意味はあるが、減量とか痩せるという意味は、ないのだ。

 そういえば、アップルダイエットのほうは、なんとなく「林檎を食べた方がカロリーが少ないということなんだろう」と子供心に想像できたが、いまだにわからないのが「紅茶きのこ」である。
 Wikipediaに写真があるが、見た感じの気持ちが悪そうだし、なにやら「いったん雑菌がはいったら、どうするのだろう」的なおびえも感じる。あれはほんとうに流行っていたのだろうか。少なくとも北関東の田舎では、周囲の大人たちがやっていたようには記憶していない。

「盗難」とは、盗まれる被害のこと

 家畜の盗難被害がつづく前橋市で、JA前橋市がパトロール実施中という幟を作成して農家に配布したという記事。この事件そのものは許せないことだが、日本農業新聞が「盗難許さん」という見出しを添えていたのが、ちょっと気になった → 2020.09.22 盗難許さん! 旗印

 盗難許さんは、窃盗を許さない、泥棒を許さない、という意味には、ならない。盗まれる被害があったことが許せないという、微妙に異なる意味になるはずだ。

 ここは、泥棒退散くらいにしておいたほうが、よかったのではないだろうか。