声をあげる勇気

 買い物に出ようと近所を歩いていたら、犬を連れた男性が何らかのゴミを団地の花壇に隠そうとしていたところに遭遇してしまったようだ。近くにいた女性がわざわざその人物に近づいて「ゴミを捨てる場所ではありません、持ち帰ってください」と声をかけていた。

 わたしたちはそのときになって初めて「ちょっと挙動が怪しいといえば怪しかったが、あれは花壇にゴミを入れていたのか」と気づいた次第だ。まだ明るい時間帯で人通りもあったとはいえ、その女性が毅然とした声を出せたことに、わたしとしては驚きがあった。今のご時世、どんなことで逆恨みされるかわからないのだ。

 言われた男性のほうは、何やらとんちんかんなことを言いかけたが(これはですね〜とか、聞いていて意味不明な内容)、そんなことにはごまかされずに、女性はくり返し「ゴミを捨てるところではないんです、持ち帰ってください」と。そうこうするうちに周辺に人がさらに通りかかった。わたしたちはそこで去ったが、大きなトラブルにはならなかったと信じたい。

 男性は犬連れであったから、アルバイトで犬の散歩をしている人物でないかぎりは、これからもそこを日常的に通るはずだ。そういう人だからこそゴミ捨てを許せないと、女性は声をかけたのだろう。

 わたしも、できるだけ、見て見ぬふりをしてはいけないと思うが、実行できるかどうかは自信がない。