どこをとっても名作「悪魔の手毬唄」(1977)

 U-NEXTに金田一ものがけっこうあるので、大好きな「悪魔の手毬唄」を、ストーリーは頭にはいっているのだから雰囲気だけでも飛ばし飛ばし見てみようかと、クリックした。

 ——飛ばすなど、とんでもなかった。どのシーンも「シーンを飛ばすなんぞ失礼な、最大限の敬意を払わんか〜」というお叱りの声がどこからか聞こえてきて(←聞こえてない)、けっきょく30分ずつ休みながら、1日ですべて見てしまった。

 配信をやっているのはそれほど多くないので、楽天のDVDをご紹介。

 
 ちなみにわたしが見たU-NEXTは、こちら。本日現在、会員になればこの作品は定額内。お試し期間もある。
U-NEXT 「悪魔の手毬唄」 1977年

 まず、田舎の山が美しい。
 現在ならばあまりに美しい映像を見たとき「どこか描いてるんだろうな」とさめた目を向けてしまうこともあるが、当時の映画というものは、実際にそういう場所を探して、日当たりのタイミングや天候などを考慮しながら、辛抱強く撮影がなされたのだ。
 見終わったのちに残像のように残るラストの駅シーンは、場所は岡山ではないそうだが、古びて見える駅を使用して撮影したらしい。

 そして俳優陣が豪華すぎる。はまり役となった石坂浩二はもちろんだが、あげればきりのないほど、たくさんの人々が登場。

 岸惠子(当時おそらく40代後半)、草笛光子、白石加代子、渡辺美佐子という、どれかひとりでもギャラを食いそうなそうそうたる役者を揃えたのみならず、高齢でやや呆けもはじまっているというのに旧家を仕切る耳の遠いおばあさんには、「ザ・日本の民話」という称号でも差し上げたい国民的女優の原ひさ子。

 若山富三郎、辰巳柳太郎、中村伸郎らが固める濃いめのメンツに風を注ぐのは、若き日の頭師孝雄(家を仕切る原ひさ子に従順)、辻萬長(岡山の警察官、警部役の加藤武の部下)、岡本信人(現地の巡査)…。

 岸惠子の息子を演じたのが北公次、娘が永島暎子(現在はすっかり貫禄のお方)。連続で殺害されていく女性や、命を狙われた女性には、高橋洋子、仁科明子ら。

 役者のタイムカプセルとして見ているだけでも楽しいほどだが、ストーリーはもちろんある。若い女性の連続殺人だ。しかも殺され方がエグい。

 現在ならば「もっと早く誰かに打ち明けておけば別の道も開けただろうに、なぜこんな事件を起こすまで溜めこんだ」という解釈も成り立つわけだが、昭和前半〜戦後における、閉塞して懐の寒い山村を考えれば、秘密をこらえにこらえていくうちにどうにもいかなくなり、凶行に走ったというのも、現実味がある。

 だが、現実味があるといっても、秘密の種がまかれてそれが20年にわたって育つあいだの心理過程としては自然という意味である。毎回「こりゃないよなぁ」と考えていることがあり、そちらは別。
 それは——物事のすべての発端となった人物について「いくら多少の変装をしたからといって、小さな村に月1回も出入りしていたら正体がばれないはずがない、気づいた人間がもう少しいたはず」という思い。それは今回も消えなかった。