ときどき思い出すことなのだが、ネット上でくり返し、日本ユニセフ協会への中傷がある。何がきっかけでとくにターゲットになってしまったのかまではわからないが、アグネス・チャン氏への暴言も多いようだ。
わたしなりに考えたことだが、国際児童基金のユニセフが、日本で活動している団体「日本ユニセフ協会」に手数料(人件費や必要経費)を認めていることが、世間の一部の人々には「全額をユニセフに渡さず、ピンハネしている」と思えてしまうのだろう。
だが、この理屈を言い出せば切りがない。自分の募金を末端まで「経由する団体などはただ働きで」届けろという話にもなりかねない。これはただのわがままであり、とても現実的な話とはいえないように思う。
たとえばどこかの団体が募金を募って「○○の人々にきれいで安全なトイレを使ってもらいたいので設置費用です、募金にご協力を」と説明したとき、募金をする人は、トイレの製造業者や設置業者に料金を払うなとは、言わないはずだ。設置のボランティアが必要ならやりますよと自分から申し出るのはともかく、ボランティアにただで設置させて仕入れも型落ち品をタダ同然で手配したらいいとまで、募金をする側が、普通は言わない。なぜかその「普通は言いそうにない」ことを、この数年ほどはとくに、日本ユニセフ協会に対して言っている人たちがいる。そして多くの場合、なぜかアグネス・チャン氏がやり玉にあがっている。
きつい言葉を書いている人たちの何割くらいが、自分できちんと経緯を確認したのだろうか。
もう20年くらい前になるが、インターネットがまだそれほど多くの人に利用されていなかったころ、巨大な掲示板群として話題になっていた旧称2ちゃんねる(現在の5ちゃんねる)に、ある気の重い用事でアクセスしたことがあった。たいへんな作業だった。
間接的な知人が、実生活での勤め先についてあれこれ掲示板で書かれているが、なぜそうなったのかを知りたい(勤め先が違法であるとか、本人が犯罪行為をしているといった事情ではなく、ただモラルに反した人間であるかのように書かれて勤め先もどうしたらいいのかわからないと困っている)、だがいきなりのことで手も足も出ない、と。どこから読んだらいいのか、何から調べたらいいのかすらわからないと、心配をしている人から頼まれ、わたしが読みに行った。多少はネットに慣れていたわたしですらたいへんだった。
あの人はA(職業、勤め先)である。
じゃあ○○してしまえるね、と誰かが書く。
ええそうなのと、別の人が応じる。
だんだんと「あの人はAだから○○な行為をしている」と確定扱い。そのうちときおり誰かが「確定みたいに書くのは」と発言しても、もう注ぎ口を全開にした牛乳パックの下にお猪口があるような状態で、床は牛乳まみれ、収拾がつかずといった状況だった。読んでいて頭痛がした。
けっきょくその間接的な知人は、勤め先のホームページに上司名でコメントが出る騒ぎになったようだった。お気の毒に思った。
ひとりひとりの人が、軽くわいわいと話にくわわる前に立ち止まってくれたら、もう少し違う世の中になると思うのだが、それはほんとうに、難しいことなのだろう。