ニュースは地震速報以外はテレビで見ることがほとんどない。だから家のどこかでついていたテレビから「渋谷で軽トラックが倒された」と聞こえてきても、まさかハロウィンのバカ騒ぎだとは思わなかった。
人は、どうしてしまったのだろう。無秩序をわざわざ作り出して楽しいのか。
来年から、ハロウィンが近づいてもことさらに無視してみたらどうだろうか。被害があったとき以外は報道しないというのも、よいかもしれない。どうかしている。そして今回の騒ぎについても店頭や街頭での狼藉が防犯カメラに残っているであろう人たちは、探し出されるのを待つ前に、自分から謝りに出向いて賠償金を払うべきだ。
今回の騒ぎで、タイトルすら忘れていた萩尾望都の短編漫画「偽王」を思い出した。といってもその話の中で描かれる「すべての根源」であった昔の悲劇が、今回のバカ騒ぎのような狂気に満ちたものであったことを、連想で思い出した。その過去の事件は冒頭で語られるに過ぎないが、初めて読んだときの衝撃は、忘れられない。タイトルがわからなくてネットで検索して、やっと「偽王」という作品だとわかった。家のどこかにあるかもしれないので、また読んでみよう。
また、アメリカの映画で「パージ」というシリーズがある。1年に1晩だけ(夜から朝までの12時間)すべての犯罪が合法化される制度を持った国の話だ。消防も警察も、救急病院も機能しなくなる。その12時間にカタルシスを得ろと、その代わり普段は犯罪をするなという名目で設けられた制度だったが、実際には殺害する側とされる側の社会的な層には歴然とした違いがあり、支配者層の思惑が見え隠れしていた。
これらの作品では、無秩序は制度として作られたものとして描かれていた。
近年のハロウィン話は、これらとはまったく異なる。
今回にかぎらず渋谷交差点の混雑は、DJポリスだなんだとおもしろく持ち上げながら語るのではなく、まじめに対応していかねばならない。焦眉の急だ。東京に暴徒は要らない。日本のどこにも暴徒はいらない。発散したいストレスがあると自分で思う人たちは、別のことをしてもらいたい。自分の行為が他人のトラウマになる危険性も、認識してほしい。