インド連邦に属するアンダマン・ニコバル諸島の北センチネル島には、外部とまったく接触を持たないことで知られる原住民が住んでいる。交流がないため人数は不明だが数十名は存在していて、もしかしたら数百名かとも言われている。参考:Wikipedia 北センチネル島
ときどき空撮で「様子を見にいったら槍で威嚇された」という、世界のどこかの映像が出ることがあるが、そのうちのいくつかはこの島のものだ。わたしもこれまで何度か映像を見ている。
11月中旬に、アメリカ人の20代男性が、この島で殺害されたものと思われる。キリスト教を伝えたかったのだそうだ。地元の猟師らに有料で協力を依頼して沖合まで船で移動し、自分はカヌーで島に近づいた。1日目は矢傷を負い、2日目は何らかのいさかいでカヌーを壊され、船まで泳いでもどった(参考:2018.11.25 CNN: Indian authorities struggle to retrieve US missionary feared killed on remote island)。そして3日目には、浜で引きずられているところが目撃された。すでに遺体と思われるが、それを引き取れない以上は死因なども不明だ。
相手が何も害をなさない以上は、必要もないのに交流を求めてはいけない。自分たちの側では一般的でも先方に免疫がないもしくは治療方法が知られていない病気を感染させたら、たいへんなことになる。しかも今回のように、キリスト教を伝えたいのは自分の側だけの願いというのは、ほんとうに相手にとって迷惑な話だ。
これまでも、漂着した猟師が殺害されるなどの事件があったと聞くが、19世紀にはイギリス人が島から数名をさらって病気で死亡させたこともあったらしい。言葉による腰を据えた話し合いができない以上は、長年の敵対心や恨みをジェスチャーで解消するわけにもいかないので、傷をさらにひろげないことが、何より大切ではないだろうか。
それにしても、この男性の立場を理解している一部のキリスト教徒からすれば、彼は殉教者なのだそうだ。島の人々の敵対心を増幅させて、現地の関係者に多大な迷惑をかけているのだが、布教のためとなれば、それが美化されてしまうのだろう。