「店内でお召し上がりですか」

 カフェスペースのあるパン屋で買い物をした。だがレジに向かおうとした瞬間に、店員さんが別の用事でカウンターを離れてしまった。その店員Aを目で追うのか、あるいは別の店員BまたはCさんがやってくるまで待つのか、さてどうしようか…とキョロキョロしていると、いったん去ってサイフォンのあたりで何かをしていたAさんと、ガラス越しに目が合った。

 店員Aさんは周囲を見て「自分か、自分しかいないのだな、よしこの客の会計を担当しよう」という面持ちで(そこまで大げさではないが)やってきた。客を待たせたことで少し動揺したのか、わたしのトレイを受けとりながら言った——「店内でお召し上がりですか」、と。

 トレイには厚切り食パン3枚入りの袋と、クロワッサン1個、そして塩豚まんが中にはいったパン(?)のような、詳細は忘れたがそんな名前のもの1個があった。これを店内で珈琲1杯をおともに食べる人は、まずいないことだろう。だがわたしはそう聞かれた。そこで静かに「あ、いいえ、持ち帰ります」と返事した。

 パン売り場は客が少ない時間帯で種類も多く残っており、カフェスペースもいつになく空いていた。たいていは利用客が多く忙しそうな店内だったが、今日はなにやら、のんびりしていて、静かだった。
 せっかくなので珈琲の1杯くらい飲んでもよかったかもしれないが、予定外のことであり、自分だけくつろぐわけにもいかない。また今度ということにしよう。

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