反ワクチン運動に思う

 米国の元FOXニュースの幹部で、現在は広報担当の大統領次席補佐官であるビル・シャイン氏の夫人ダーラ・シャイン氏が、通日前にトンデモなツイートをして話題になった。
 各国ではしかの大流行に頭をかかえている現状に「子供のころは誰でもかかった病気で、(自分や周囲の人々は)天然の免疫を持っている。子供時代の病気が復活すれば、健康になるし、がんとも闘える」だそうだ。Darla Shine tweets で検索すればたくさん引っかかると思うが、こちらのワシントンポスト紙( → 2019.02.15 ‘Bring back our #ChildHoodDiseases,’ White House official’s wife says as she criticizes vaccines )に、ツイートが紹介されている。

 ここまですごいことを公的な人物の夫人がツイートするというのは、口あんぐりである。わたしなどはただ驚いているだけでもよいが、実際にお子さんをなくされた親御さんが読めば、どれほど傷つくことだろう。
 子供やご家族をなくされたという、ただその悲しみだけではないかもしれない。病気が大流行する理由の何割かには、ワクチン接種をしていない人たちの輪における集団感染が挙げられることは間違いない。その人たち(ワクチン反対という考え)を苦々しく思いつつ気持ちをおさえていたところに、堂々とツイートをされたならば、腸が煮えくりかえる可能性もある。

 あるグループの大多数がワクチンを接種していた場合と、逆にほとんどが無防備であった場合とでは、その人たちの輪と接触を持つことで感染させられる確率は、比べものにならない。まして本人が体調や体質などの理由でワクチン接種ができない事情があるならば、周囲の大多数が接種を済ませていると信じることにより、どれほどにか安心できることだろう。

 ダーラ・シャイン氏のことで、東日本大震災の年に雑誌対談で心ない暴言を吐いた作家(女性)のことを思い出した。大意だが、避難所でただ助けを待つのではなくその辺のがれきから燃えるものをとってきて暖をとれ、石でかまどを作って煮炊きしろ、などである。検索すればすぐ当時の記事を解説してくれているブログ等が見つかるはずだ。
 このふたつの例を考えていて、事実誤認(*1)があっても思いこみを堂々と発する人がいること、とくに「年齢的には大人で、物事をきちんと理解する能力がありそうなのに、みょうな考えを堂々と主張する人がいるのはなぜか」と、しばし思いを巡らせた。

(*1 事実誤認とは、たとえば自然に得た免疫であっても一生ものではなく消滅する場合もあること、ワクチンで擬似的に罹患させて得る免疫は自然のものではないからよくないという考え方は短絡的ではないかということ。もう1件では、塩水にずっと浸かったがれきから燃えるものを拾ってきてそれで暖をとれとは、薪のなんたるかも考えずに発言しているであろうこと、など)

 そして、こちらの記事を発見した。2015年に体験者が英語で書いた記事を日本語に翻訳されたブログだ( → 反ワクチン運動をやめたわけ)。読みやすいので、ぜひおすすめしたい。

 人は、ひとつの考えに固まっている環境のなかにいると、ほかを見ることが難しくなる。ほかに考え方があるかもしれないという発想すら、なくなってしまう。そういうことなのだ。この方の例ですべてを説明できるわけではないが、多くの場合に共通する話だろう。

 この体験者は何かがおかしいと思って自分から調べはじめ、そして目が覚めたという。何を信じていても「おや、何かがおかしい」と思うきっかけがあれば、そのときの直感に素直にしたがって、立ち止まってみることが、誰しも必要なのではないだろうか。
 自分も、きっかけがあればいつでも立ち止まれる人間でありたい。そう願っている。

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