実生活では人の顔をそれほど覚えるほうではないのだが(ただし声は覚える)、映画ではかなり年数が経っていても、見たことがある人を思い出す場合がある。
今日はどこかのチャンネルで、以前から見たかった「ローズの秘密の頁」という作品を見つけたが、助演の看護師役の女優さんに見覚えがあった。「この顔の彫りの深さ、これはまさしく、フィオナの海に出ていた、アザラシの姫さまではないか」と、いてもたってもいられず、映画を見ながらその場で検索して確かめたところ、Susan Lynchさんで、当たりだった。
フィオナの海(原題: The Secret of Roan Inish)というのは変わった映画で、アイルランドの海岸地域に住む少女フィオナの家の物語だ。乳幼児のころから数年も行方不明の弟が海に生きていると信じている彼女は、さまざまな海の生きものや伝説の存在セルキーを思い描く日々を過ごしている。そしてあるとき、ついにフィオナは…!?
(いや、これ、説明しようのない映画なので、雰囲気だけ想像してください ^^;)
セルキー役の女優さんは、フィオナの想像の中でアザラシと戯れている場面での登場なので、別に台詞があったわけでもない。だがもう、アザラシまみれのそのインパクトといったら、忘れられないお姿であった。
いまから見ると、最近の人気女優ブリット・マーリングに面立ちが似て感じる。
ところで、今日見たローズの秘密の頁もまた、なかなかすごい話だった。事情により40年以上も精神病の施設に入れられていた女性が、施設が閉鎖になるために別の施設(または引取先があるならば誰かの家)に行かねばならなくなる。精神障害があるとされていた彼女は、誰も信じてくれない彼女なりの事実と、壊されて不完全になった記憶、熱い思いを、手持ちの聖書に細かく書きこんでいた。
引き取り手のない彼女の様子を見るため、施設の閉鎖目前に依頼を受けてやってきた医師と、部屋担当の看護師に、彼女はようやく心を開いて昔語りをはじめる。それは、悲しくもすさまじい話だった——
最後の最後、そこまで細かく描いてしまうのかという点は、好みの大きく分かれるところかもしれない。だがわたしは、あれくらいでよかった(それまでがあまりに悲惨だったのだから釣り合いがとれる)ように思う。
医師役のエリック・バナ、主人公の運命を大きく左右することになった神父役のテオ・ジェームズ、若いころのローズを演じたルーニー・マーラ、どれも当たり役と思う。高齢になってからのローズを演じたのは、名優ヴァネッサ・レッドグレーヴ。