人の関心事と温度差: 「みんなで一緒」も、そこそこに

 ネットを見ていると、さまざまな人がいる。引きこもりへの偏見が助長されることを恐れる方々、日本で農家により栽培されてきた穀物が自家採種を認められなくなり毎年お金を払って種を買わねばならなくなることに憤慨する方々、子供を預ける保育園が見つからない方々、国内が貧しくなっているのにアメリカから高額の武器を買うことに驚く方々。

 それらのさまざまな関心事において、人の共感する範囲は、ある程度は重なり合っているのかもしれない。同じようなものに共感したり反発する層というのは、ある程度の規模で存在するはずだ。
 だが、住んでいる地域が同じであったり、近い文化的背景を持つ人びとであっても、まったくかすりもしないほど関心事が異なる場合がある。

 周囲と同じであると便利だからと、頭で考えずになんとなく流されることの危険性について、ふたつ書いてみる。

 わたしは20年ほど前から、インターネットではNetscape系列のブラウザを使いつづけてきた。マイクロソフトのInternet Explorer(以下IE)は、どうしてもそのブラウザでないと読ませてくれないサイト以外では、起動しないようにしていた。そうするうちに2005年ころからWindowsを完全にやめてMacひと筋になったので、IEを使わずに済むようになった。
 なぜそれほどIEを嫌っていたかといえば、マイクロソフトの企業姿勢(OSで有利になっている立場を利用した強引さ)もあるのだが、バグは多いし操作性は悪いし、セキュリティホールは狙われ易いし、それを避けるためにたくさんのパッチを当てて、さらに「最新版にして」としつこく言われる——これはまるで、美味くもない食べ物を必ず賞味期限内に食べろと言われ、どうにか無理に食べると念のためと言われて胃薬を飲まされ、しかもせっつかれて次回以降の買い物までさせられるような、おもしろくない気分だったわけだ。

 最初から、そこそこ美味で胃薬も要らない食べ物を、好きなタイミングで買って食べたほうがよほどいいのだが、周囲はその状態(言われるがままにパッチを当てつづける)を、正常だと思っていたようで、パソコンはたいへんだとため息をついていた。

 みんなが使うものが統一されると何かと便利と考えるお役所や企業、そして国民性によるものなのか、結果として日本でだけはブラウザのシェア9割以上がIEという時代が何年もつづいた。シェアが割れなければずっとみんなが余計な胃薬を飲まされるというのになんたることだろうと、わたしは少数派のアンチIEとして、長年を過ごした。

 この件では「ほかのブラウザを使おうよ」と何度も周囲に話したが、ほとんど理解されなかった。中にはせっかく自由に選んで使っていたブラウザやメールソフトを「他のみんなと同じのにしたほうが便利だから」と、マイクロソフト社製品に変えてしまう人までいた。

 なんとはなしに「みんな一緒」というところに心地よさを感じてしまうのは、危険だ。

 自民党だけを強くさせると世の中がダメになると、とくにこの10年くらい田舎の親や周囲に何度も話したが、まったく通じない。話を聞けば政権には怒りや不満を感じているようだ。だがそこで終わっている。田舎のほうでは「自民か共産か棄権か」という、せまい選択肢しかない場合もあるのだろう。だが、安保法制やテロ等準備罪(いわゆる共謀罪)について電話口で怒っていたわたしに、聞きたくないとばかりに話を軽くそらした上で、親が通話を終了してしまったとき、まるで自分が「UFOを見たと言っているわけでもないのに、頭がおかしいと思われたか」と、呆然としてしまった。

 あれはいったいどういうことなのか——。おそらく、老齢の身で田舎暮らしでは、話を聞いても何もできない、仕方ないというあきらめもあるのだろうが、もしや「それほどひどいことにはならない」という思いが、これまでの数十年でしみついてしまっているのかもしれない。だが「みんなと一緒にゆっくり変わっていくことに、疑問や抵抗の意思を感じない」ところから、世の中は悪くなるものではないのか。

 誰でも、ひとりの力は限られている。たいしたことはできないと、思っている。

 そういう意味でのみ考えても、理解してくれる人にばかり話をするのは楽だ。わたしも自分の親にすら相手にされないような話は、ほんとうは面倒で、したくない。むなしさを感じることも多い。

 だがわたしが世の中にできることがあるとしたら「世の中にはいろいろな考え方がある」ということを、人に示しつづけることなのだろう。気の合う仲間の前でだけ言っていたら、何も変わらないことなのだ。

 小うるさいことを、これからも書いたり言ったりしようと思う。

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