今日、杉並区某所とだけ書いておくが、目の前で人が倒れた。人がたくさんいる場所で、わたしも連れと一緒に話をしながら歩いていたのだが、近くで男性が大きな声を出したかと思ったら、まうしろに倒れた。
そのとき見たことを、できるだけ正確に書こうと思うが、少しは記憶が薄れているかもしれない。
その男性A(中高年からやや老齢に近づいている)は、何か大声を出した直後に、まるでふくらはぎのあたりに何かロープのような障害物でもあるかのように、足の位置はそのままで、体だけがまうしろに倒れた。その角度から考えて、近くに誰か喧嘩相手でもいて小突かれたのかと、わたしは推測した。だがすぐ近くと呼べるほどの距離には、人がいるようではなかった。周辺には人がいたが、その男性を押すような場所には、誰も見当たらなかった。
何が起こったのか、わからなかった。
わたしは病気や熱中症ではなく、あくまで何らかの力が前の方から働いたために男性が倒れたと思っていたため、その男性がすぐ起き上がるのかと思っていた。そうではないのかと思うまでに、数秒以上がかかった。
周囲にはけっこう人がいたが、ほとんどが、呆然としていたように思う。
近くにいた地元の人らしき男性Bが、その倒れた男性Aに近づいてきて、表情を見た。そして別の誰かに何らかの合図をしてから、どこかに小走りに移動した。あとから考えると、どうやら交番に走ったらしい。
わたしたちも含めて周囲の人たちが少しずつ男性Aに近づき、表情から考えてどうやら病気または熱中症で倒れたらしいということになった。男性が倒れる前に声を出しながら傘をガタガタさせていたので、病気ではなく何らかのトラブルで倒れたのではと思っていた人が、やはりいたようだった。何度もそのことを小声で言っていた。
呆然としながらも「誰かもう救急車呼びましたか」と、小声で周囲がざわつきはじめたころ、その上述の男性が走っていく前に合図をしたらしい別の男性Cが「いま、そこの交番に知らせに行った」と発言。
だからといって救急車を呼ばなくていいというわけではないので「呼びましょうよね、呼んだほうがいいですよね」と、ざわつきはつづく。119でいいんだよね、電話していいんだよねという確認しあうなかで警官が到着し、「救急車を呼んでください」と叫ぶころには、ひとりかふたりが、通話を開始していたようだった。
そのころには人だかりが増えてきていた。救急車に男性が乗るところまでは見届けなかったが、あれほどすぐ近くに人が10人くらいいても、状況が飲みこめないまま、数秒以上を無駄にしてしまうものなのだと、そのことにも驚いた。あの自分たちがぽかんとしてしまった時間で、手遅れになるようなことがなかったと、いまは信じたいが…。
次からは、まず声をすぐかけて救急車だ。次からはもっとテキパキと動けるようにしたい。
あの男性が無事であったことを祈っている。