いや、正確には、中学校の同窓会に成人式前後のころ出たような記憶がある。なぜかというと東京に出てきてからも学生のうちは田舎の家に住民票がある友達がほとんどだったからだ。わたしもそうだったし、なかには卒業したら田舎に帰るつもりの人もいた。だから成人式ころまでは、田舎とまだつながりが強かった。
その後、東京に住民票を移して自分だけの生活が長くなってくると、田舎の友達との付き合いも減った。もともと筆無精なこともあり、年賀状をくれる友達も数人いたものの、自然と少しずつ減っていった。
田舎でとてつもなくいやなことがあったというわけでもないが、楽しかったとも思えないし、いまから会って日常を語り合うにも話題がない。
10年ほど前だっただろうか。田舎の家にかつての同級生から「同窓会の案内をどこに送ればいいか」の問い合わせがくることがあり、どうしたらいいか困っている様子だった。いまは母自身も隠居の身であり世間とほぼ接点がないが、当時はわたしが同級生たちと連絡を取り合わないから自分に連絡が来るのだ、どうごまかせばいいのかと、気に病んでいたのだろう。何度も来たらどうしようと思っていたようだ。
人はみんな変わるし、田舎のメンタリティも変わっているとは思うが、どうしても「話を合わせなければいけなかったころ」の記憶が残っている。ひとりだけ変わったことはできない、みんなとそれとなく合わせなければいけない——わたしの田舎は、当時の大部分の田舎町と同じように、そんなところがあった。
出ても話題がないだろうなと、そんな風に思っている。幸いなことに呼ばれなくなったので、もうそんな心配は不要だが。