正月がくるので玄関飾り(毎年リース型の飾りをスーパーで買ってくる)を貼りつけようと、玄関のドアを雑巾で水拭きした。たったこれだけのことでも、年末と、それ以外は大雨のあとでひどく汚れたときくらいしかやらない。掃除が苦手である。
子供の頃の、田舎の家の大掃除ときたらとんでもなかった。二日ほどかけて両親が掃除したのだが、畳を剥がして庭に持ち出し、風に当て、そのあいだに室内の掃除をする。それを部屋の数だけおこなった。わたしも含めた子供一同はときどき窓ガラス掃除を手伝う程度だったが、親たちは掃除を終えるとさらに自宅にあった杵と臼で餅をついていた。しかも正月の三が日ともなればどこからともなく親戚たちがやってきて、そのたびにお茶を出していたのだから、あんなにたいへんなものは、少しも正月休みとは呼べそうにない。
年齢にして考えると、父は現在のわたしくらいで、母はもう少し若かっただろうか。
東京に出てきてから、年末だからといってまともに大掃除をしたことがない。ときおり模様替えなどの必要に迫られて、部屋をひとつだけ掃除するようなことはあるが、それだけだ。すべての部屋を短期間のうちに掃除するようなことは、ここを出て次の家に引っ越すようなタイミングでしか、実現することはないだろう。