先日パラサイトを見てきたのだが、今回アメリカでアカデミー作品賞(と国際長編映画賞)を受賞したということで、どなたかが作中に出てきた台湾風カステラの話を書いていた。たしか作品内の台詞に「カステラ屋で失敗して」といった言及が1〜2回あったと思う。その件は実際にあった題材だ、という話だった。
検索をかけてみると、韓国でかなりの店舗数を誇った台湾風カステラのチェーン店「大王カステラ」に (アルファベットではDaewang Castella)関して、あるケーブルテレビの番組が原材料の売り文句と実際の違いを暴いたのだという。
この部分は(自分が韓国語に明るくないため)伝聞になるが、どうも同チェーン店の台湾風カステラは、新鮮な卵と小麦粉とバターでできている、というのを売り文句にしていたらしい。ところが実際には通常の食品と比較しても多い食用油と、乳化剤などの添加物が含まれていることがわかったという話だった。
英語記事ではこのふたつを読んだが → 2017.03.14 Korea Herald Big sponge cakes in dispute over ingredients / 2017.03.17 Korea ExposeThe Unpalatable Truth? Castella Cake Castigated on National TV そのうち後者の記事には番組内で紹介された指摘として、1回の焼成で700mlの安価な植物油を使っていたということだった。
この番組ののち、同社のチェーンを中心に台湾カステラを買い求める人が減るという社会現象につながったのが、映画「パラサイト」内で出てきた、カステラの件なのだという。
実際に原材料で嘘をついてたのか、よい商品であると誤解させていたのかは、わたしにはわからないが…。それ以前の問題として、何十店舗以上も系列店があったのなら、手作りの良品イメージをたもちつづけることは容易ではなかったはずである。消費者も売り文句が誇大であることに気づく機会はほんとうになかったのかと、やや疑問に思う。あくまで、会社が原材料を正直に表示していたのかどうかが決め手ではあるが、なにせ3年前の話なので、ちょっとこの続報は探しにくそうだ。
さて、カステラの話にもどろう。
わたしは一般的なカステラ以外のものをあまり食べたことがないが、日本でもはやっている中心が半生食感のパンデローのようなものや、いろいろなものがあるのだろう。
ただちょっとおもしろいと思うのは、カステラというのは日本に根ざした菓子であり言葉ではあっても、もともとはスペインのカスティーリヤ地方という意味を持つポルトガル語由来の外来語だ。現在はこのcastellaという単語そのものが、英語など外国語でも、日本のカステラを指すがもともとはポルトガル語、ということで紹介されている。菓子が好きな人にならcastellaと言っても通じる場合があるが、ねんのために英語では “a big, suare-shaped sponge cake” (大きくて四角いスポンジケーキ)と説明した方がいいだろう。
そしてさらにおもしろいと思ったのは、日本で発達して言葉としてもカステラというものを引きずりながら、他の国ではこうして油脂を入れているのだなという点。日本はカステラを名乗るものには普通は油脂を入れない。油脂を入れたらスポンジケーキやシフォンケーキになってしまう。つまり、わたしとしては「油脂がはいったら、カステラではないよなぁ」という思いなのだが、もはや定義や垣根は曖昧なのだろう。
それにしても、アカデミーで作品賞と国際長編映画賞のふたつを受賞するとは、恐れいった。個人的にはいまひとつの作品と思えたのだが…最近どうも、アカデミーなどの大きな映画祭は、アジアなど、自分たちの慣れ親しんだ価値観とは異なったものに注目していきたいという傾向が強いように感じている。