BBCのドラマでアガサ・クリスティ原作「蒼ざめた馬」というのを録画しておいたのだが、それを見ながらずっと「原題が the pale horseなら、蒼ざめてなくて色白な馬じゃね?」と思っていた。
見終えてから検索してみたところ、もともとの表現としてはヨハネ黙示録の四騎士に由来するのだそうで、第四の騎士が乗っていたのが the pale horse だとか。さらに、これはWikipediaによればギリシャ語のchrolosの訳語だそうだ。そしてchrolosを英語にした場合は、灰色または緑色、黄色みを帯びた白っぽいものなどを意味する。
ただ、英語のpaleには「色を失った」という意味合い(具合が悪くて顔色が悪い)があり、英語のpaleを訳した場合に「青白い」とする可能性は多分にある。だが青白いを蒼白に言い換えることはできても、蒼白の白をとって「蒼ざめた」にすると、なにやら意味がよくわからない。白がつかないと「茂っている」とか「青々しい」というポジティブなイメージと結びつきやすい。みずみずしさとでも表現すればいいのか、とにかく明るい印象の言葉である。
というわけで、アガサ・クリスティの作品タイトル以前に、聖書で「蒼ざめた」が定訳になっている歴史があるのかもしれないが——「青白い」または「蒼白の」ならまだしも「蒼ざめた」とは、わたしにはどうしても、意味が通じにくいように感じられた。