80年代、1月のある日。共通一次試験のために泊まりがけで、県庁所在地まで出かけた。高校の担任を含む何人かの教師が引率し、クラスの何割かの同級生らとともに。
試験の日は、寒かったことだけは覚えている。雪が少し路面に残っていた。
泊まった場所はビジネス旅館のようなところで、団体向けの殺風景な宿だったが、同級生が「各部屋の名前の付け方や、浴室の雰囲気が、連れこみ宿っぽい気配を残している。前はそういう宿だったんじゃないだろうか」と、しみじみ語っていた。受験の前の日にそんな観察をする余裕もすごいが、そういえばその場の全員が「前の日に焦って参考書を見てどうなる」といった考えだったように思う。修学旅行のようになごやかな晩を過ごし、早朝に食事をして試験会場に向かった。
そういえば試験会場に向かう前に、宿から「みなさんが持っていくお弁当はこちらです、忘れないで」と手渡されたものに、午前9時過ぎの製造マークがついていた。すごいな、未来から来た弁当だぞと、大人の世界の事情を垣間見ながら、出かけたものだ。
あのころ、試験は1000点満点だっただろうか…?
後日、新聞に載っていた問題と解答で答え合わせをして、あまりの点数の低さに、気力を失ったっけ。
試験会場のことより、宿と、未来から来た弁当のことばかり、覚えている。