これまで生きてきて「おそらくこの人は、わたしの周囲にいる人たち平均よりも、お金持ちっぽい」と感じた人が、おそらく10人くらいいる。おそらくもっといるのだろうが、わたしが人づきあいで「そこそこ親しくなる」までに時間がかかっているうち、縁が遠くなってしまうことがあり、そのまま気づかずに終わってしまうのだろう。
その方々にほぼ共通するのが、金銭感覚が研ぎ澄まされていることだ。支出の金額にかかわらず頭の中できっちりと計算して、得か損かを判断しているように感じる。逆にわたしなどは「仮にここで100円くらい余分に払ったとしても、この場ではかまわない。あとで100円分をどこかで得することもあるだろうから」と、即断で次に進んでしまう。ある意味でずぼらなのかもしれないが、ここは自己評価で「おおらか」という表現に、させてもらいたい。
そうした方々の話を聞いていると、高価な物をお取り寄せしたり、食事に出ることもあって(ただし支払いはご本人とは限らず、親御さんであったり、親族のうちご年配の方である場合もあるが)、やはり普段の生活レベルがわたしとは違うのだなとも感じる。だがそうした話は自然と出てくるものであり、こちらをうらやましがらせようなどの下品な意図を、持ち合わせていない。かなり自然体で、嫌みはない。
そんなときふと「あれ、さっきなんだか損をしちゃったかな」と、わたしなら気にしない程度の金額で庶民的なことをつぶやくのを見ると、たまらなく、人間らしさを感じる。ギャップによる意外性から、勝手にファンになってしまうとでも言えばいいのか。
自分自身が人にどういった影響を与えてきたかはわからないが、わたしもいつか、人に自分の何かを記憶してもらって、人間らしい人とでも感じてもらえたら、それはありがたいことであろうと思う。