いちおう、ホラー映画なのだろうか。アイスランド語の原題は Dýrið で、これは「動物」という意味らしい。公式サイトはこちら。
アイスランドの山で羊を飼う夫婦の前に、ある生き物が現れる。羊の出産を手伝って、引きずり出したものが「それ」だったのだ。最初はそれが何なのかは画面に出さない。だが頭が羊で、頭以外を見せないのだから下半身が「羊ではない」というのは容易に想像できる。
やがて夫婦は「それ」に亡くした子供の名前を付け慈しむ。
生みの母(羊)が子供を求めて窓の下から離れないが、妻はその羊を非道な方法で追いやる。
「それ」の愛らしさや、ほのぼのとしたシーンも描かれる。いったいこの映画はどういう話になるのだろうかと思わせたところで、突飛な、だがある意味で現実的なものが出現して、話は終了する。
終わり方が物足りなかったが、まあ、いいのかもしれない。
以下、少しネタバレに近くなってしまうかもしれないので、未見の方は注意。
===== 見た感想 =====
見た目も、立場としても「ぜったいに実子ではありえない」存在を、夫婦は自分たちの寂しさから溺愛し、本来の母である羊を排除する。許されないことであるのに、そこに目が向くかどうかで話の見え方が違ってくるのだろう。
これを「立場の強い金持ち」と、「いつも踏みにじられる弱者」に例えれば、まったく自然で筋の通った話なのだ。最後にやってくるものは化け物でも何でもなく、仕返しであり、報いだ。されたことをやり返しにくる何かは、ホラーでも何でもなく、当たり前のものである。