物価のこと、公共料金や税金の負担増や、マイナンバーカードごり押しのあまり健康保険証が廃止になるらしいとの流れで、日々がどうしても暗く感じられる。界隈でも飲食店が閉じてしまう事例が、例年の春よりも多いようだ。景気の悪化がかなり深刻ということに他ならない。
この3年、とにかく暗い話題が多かった。いつおさまるとも思えない新型コロナのことで先行きが不透明で、あまり先の予定が立てづらかったことも人々の気持ちに影響している。わたしたちは、いまだにほとんど外食をしていないし、映画にもあまり出かけていない。
ただ、ひとつだけ「運がよかった」と思えることがある。
新型コロナが深刻な状況になりそうだというのは、2019年の暮れくらいから一般の人間も耳にするようになった。2020年の春には学校の一斉休校、そしてマスクやウェットティッシュといった衛生用品が店頭から消えて、数ヶ月のあいだ品薄になったことで、気持ちが不安定になった人も多いはずだ。
わたしたちは2019年の夏から義母を特養に入れることができた。その数ヶ月前までに伝え聞いていた空き状況では、いつになるかもわからなかったのだ。長くデイサービスやショートステイで利用していた施設なので、候補者の中では優先してもらえたのだろうと想像する。それにしても、それはとてつもないチャンスだった。
もしその入所が半年遅れていたら、もしかしたら、わたしたちはいま日々を無事に暮らしていなかったかもしれない。
2020年からは各施設でデイサービスなどの通所が大きく制限され、利用できなかった人たちがいたと聞く。ショートステイもおそらく同様だったことだろう。もしまだ義母が特養に入れてもらえていない状態であの日々に突入していたら、わたしたちはおそらく倒れていた。
毎日のように怒鳴り合って、いらついて、心が安まらず——どうなっていたかわからない。それに施設が利用できない状況がつづけば義母の体を拭いたり排泄の世話をしたりと、状況が悪化していたはずだ。コロナ前であってもそれが耐えられなくて、わたしたちが限界だったことに気づいた施設が順番を早くしてくれたのではないかと想像しているほどだ。見たからに、精神的な危険度が高い状態だったのではないだろうかと思う。
生活は厳しい。暗い話が多い。だがわたしたちは2020年にいったん倒れていたかもしれないとだけは、忘れないようにしていたい。