かつての常識では、泥棒や強盗は周囲の家に気づかれないように、そして逃走しやすいようにやってくると思われていた。だから家の周囲に砂利を敷くといいよとか、あまりに目隠しになりすぎる大きな庭木は避けようとか(いったん被害に遭えば周囲に状況が伝わらないことと、樹木そのものをつたって侵入されることの両方の意味から)、サッシの内側から防犯シートを貼っておくと割れにくいので時間がかかり相手があきらめるとか…。
だがこの1年ほどの凶行を見聞きするに付け、見られてもいいと思っている人たち、手っ取り早く犯行に及んでそのあとは逃げることしか考えていない(証拠が残るなど自分たちの捕まりにくさについては考慮しないため指紋も残していく)、内部に人がいたら縛るつもりでできれば留守を狙おうなどという手間はかけない——そんな短絡的な犯行が多い。これまでの考えをすべて変えなければいけない状況に、一般市民としては頭をかかえてしまう。
他人が来たらきちんと吠えるように犬をしつけているお宅は、多くないだろう。警備会社と契約しても、会社が同じ町内ならともかく緊急の案件(強盗や殺害)で間に合うとは思えない。相手が「できれば留守だといいな」と思うような人間ならば、家の灯りを付けたままにしておくのもよいかもしれないが、昨今の事件では家に人がいても凶行に及ぶ。
妙な話だが、考えつくのは「寝ている間もボディカメラのようなものをどこかに付けておく、異常事態があったらとっさにキーワードを言えば録音/録画/通報をする」というシステムだろうか。もっともこれは都会向けの案であって、隣家までが何十メートルも離れているような地域や、通信回線の不安定な地域ではうまくいかないかもしれない。
現在でもiPhoneは(最初にHey, Siriを言えば)通報くらいしてくれるだろうが、Hey Siriと英語の発音で言った途端に相手にはり倒されるだろうから、その次の用件を伝えられるとは限らず、あまり実用的ではないかと思う。それならもう、家全体にAIが反応するキーワードを聞きとるシステムを入れておくとか…(システムに監視されるディストピア気分を味わうかもしれないが)。
とにかく、物騒すぎる。