親から電話がかかってきた。欲しいものがあるから送ってほしいということだった。内容そのものは日常的で、すぐ買いに行けるものだったのだが、言葉がなかなか出てこないらしく、3品目言われたうちのひとつで、細部を確認しようとすると話がかみ合わない。思いつく名詞を片っ端から並べたが、それでいいよと言ったり、違うそうじゃないと答えたり、よくわからないのだ。
言葉がなかなか出てこないのは中高年の自分も同じだが、母親世代になるともう、出てこないことを笑っていられる場合ではないらしく、話がなかなかかみ合わないと「情けない」だの、「じゃあもういいや」だの、余計な言葉が耳に付く。
けっきょく、わたしが思う「これだろうな」でぴったりなものがなかったので似ている品を購入したが、母のほうは「ほんとうはそうじゃない」が言いたいのかもしれないが、話を出すのをやめてしまったようだ。携帯を触ると操作を間違えるからとおっくうがるようになった母が、わざわざ電話をかけてきたのだから、ほしかったものであることには違いないのだが。
わたしもしばらくしたら、人に何かを頼みたいときに言葉が出てこないような年齢を、迎えることになるのだろう。