なぜか邦題が「マーダー・イン・ザ・ワールドエンド」なのだが…そこで「イン」は使わないだろうと思う。なぜこの邦題にしたのかと3秒考えたが、おそらくそのままカタカナにすると at the end をどうカタカナにするか迷った(ジ・エンドという古くさい響きのある言葉を避けたかった)のではないかという気がした。かといって「世界の終わる場所」と訳すとマーダーも「殺人」という日本語になってしまう、と。そんなところかな。
脚本や監督として、そして準主役の出演者としてブリット・マーリングが活躍。この人はほんとうにいい。「O.A. (オーエー)」での才能は、ここでも見事に花開いている。
あらすじ。
かつて相棒の男性ビルとともに未解決の連続殺人事件を追い、ネットやサイバーの技術を駆使して現場に乗りこんで調査をした女性ダービー。その後はビルとの別離を経験したものの、いまは実績も著書もある探偵である。遺体解剖もおこなう父の元で助手をした経験から法医学にも詳しい。
そんな彼女の元に、世界的な富豪であり著名人のアンディ、そしてその妻であり、現在はほとんど表舞台から遠ざかっている伝説のハッカー、リーがいるという「世界のどこか」(場所はセキュリティのため事前に開かされない)への招待状が届く。その土地からアンディは世界に向けての大きな発表を控えており、その発表を記念して著名人らを招待していた。
なぜ自分のような一般人(ほかの招待客らは各業界で一流とされている人々のはず)が呼ばれたのかという疑問もあったが、リーへの憧れと、何か大きなプロジェクトが動き出す現場に居合わせるという興奮から、ダービーはそこに出かけることにする。
そして、厳寒の地でAIが管理するハイテクなホテルに到着した一行。なんと、招待客のひとりは何年も会っていなかったかつての相棒ビルだと知ったダービー。複雑な思いのまま、夜にほんの一言でも会話をしたいとビルの元を訪れたダービーだったが、部屋の様子がおかしい。部屋の外からどうにか内部を見ることができたとき、ガラス越しに、いままさにビルが絶命するところだった。
ガラス越しに自分を見た目や周囲の状況から、殺害されたと考えるダービー。だが極寒の地で警察もなかなか来られない状況であることから、主催者のアンディは現場を立ち入り禁止にしてスタッフのひとりとして館内に暮らす自分の主治医に遺体の保存と管理をまかせて、薬物による事故死であろうと宣言してしまう。
なっとくのいかないダービー、そしてダービーに、個人的にハッキングによる調査を依頼するリー。真相に近づこうとするたびに、ひとり、またひとりと、館内で人が死んでいく。
——かなりよくできた話。もちろんストーリーに多少のアラはあるのだが、見ている間はほとんどそれは気にならない。
数年前にビルとダービーに何があったのかの回想は、現在の状況とうまく重なりながら本編に組み込まれていく。そのため初回でいきなりなくなったビルは、ずっと回想シーンとして最後まで出てくる。別れたことによりダービーの心にできたかさぶた、口にできずにいた自責の念と正直な気持ち、そして直面したくなかろうとも避けて通れない「ビルの行動を理解する」という決意が、やがて事件の謎を解き明かす大きな鍵となった。
わたしはDisney Plusの配信で視聴 → マーダー・イン・ザ・ワールドエンド