もう20年近くも前だが、ステロイド剤の影響で半年ほど急性の(しかも重めの)糖尿病になり、自分で注射をしていた。あのころ何度も看護師さんから「外出先で急に体調がおかしくなったときのため、チョコレート、あめ玉、スティックシュガーでもいいから、とにかく持ち歩いて」と言われていた。だがそのころは不思議と、激しい低血糖の症状を経験しなかったように思う。
だが半年が経って血糖値が安定し、自己注射もしなくていいことになった。あとは気をつけてくださいと言われてからの長い年数だが、それからときおり、突然の不調がやってきた。
たとえば昼食が遅れるタイミングまで何か真剣な作業をしていたときなど、冷や汗は出るは、体がガクガクするは、急激な不安に陥ることがあるのだ。以前は理由がわからなかったが、場数を踏んできて実感するのは、これこそが低血糖の症状である。それが証拠に、とりあえずカロリーのありそうなものを口に入れて水分をじゅうぶんにとり、可能ならば昼食を早めにとって、しかも食後にもチョコレートをつまむということをやると、まもなく落ちつくのだ。
昼食を忘れて作業に没頭といっても、たいていは普通にパソコンのキーを叩いているだけである。これが運動選手だったり、体を使うドライバーさんであったり、外出先をくまなくまわる会社員だったりしたら、こんな程度の話では済まないだろう。
これを言い訳に、昼食が遅れそうなときはあらかじめ高カロリーおやつをひとくち食べておくことがあるのだが、だからわたしは体重が落ちないのである。それはわかっている。