だいぶ前のことだ。10年近く経っていると思う。わたしはある映画(失礼ながら「安っぽそうな」印象のもの)をレンタルで見ていたが、途中で現れた字幕の衝撃に、吹きそうになったことがあった。
それは、いちおうホラー映画だったと思うのだが、登場人物らは雪深い山で敵に追われていた。そしてスノーモービルの音に振り向いた登場人物が、それが仲間(ジョーンジーという名前)の乗っているものではなかったと、気づいたシーンだ。驚いたその人物の台詞に「ジョーンジーと違う」と、字幕がついた。
何に吹いたかというと、わたしの頭の中で、ごく普通の安っぽそうなホラー映画が、いきなり「関西のお笑い芸人の吹き替えでお送りします」の印象になったからだ。関東ではこのシーンで「と違う」は、まず出ない。会話体なら「じゃない」であり、文語体なら「ではない」だ。「と違う」が関西かどうかはわからないのだが、そのときのわたしにとって作品が瞬時に関西人のお笑い芸人のイメージになってしまった。
話の前後をまったく覚えていないし、タイトルももちろんわからないままだった。だが今日、たまたまケーブルテレビで「ドライブ・ハード」というジョン・キューザックとトーマス・ジェーンの映画をやっていて、これはあまりにもひどい邦題だなだと思いこみ、テレビを見ながら検索をかけたのだ。ところがなんと、英語もそのままの Drive Hard であったことが判明。あ、安易すぎるっ。検索ついでに「このトーマス・ジェーンという人は、以前にもクリストファー・ランバートと誰かを合わせたような顔立ちだと思ったことがあるが、いったい何に出た人だったか」と、ふたたび検索をしてみた。
すると出演作一覧に、スティーブン・キング原作の「ドリームキャッチャー」という映画が出てきた。ホラー映画はとりあえず見ているはずなのにそんな作品は覚えがないというのがとても気になり、IMDB(インターネットムービーデータベース)にて、作品の画像をまとめて見ていたところ…
どこかで見たような雪山だな。スノーモービルも出てくるぞ。
あれれ、登場人物のひとりが、いまはすっかり売れっ子のダミアン・ルイス(アメリカのテレビ番組「ライフ」、「ホームランド」等に出演)じゃないか?
しかもダミアン・ルイスの役名が、どこかで聞いたジョーンジー。
雪山で、ジョーンジー。こ、これは…!
…というわけで、10年近く経過してから、トーマス・ジェーンの顔立ちが気になったために、ドリームキャッチャーという映画のタイトルまで思い出すことができた。
ドリームキャッチャーは2003年だが、トーマス・ジェーンは2007年にやはりスティーブン・キング原作の「ミスト」に出ていたっけ。
しかし、写真をひととおり見てもなお、ドリームキャッチャーの話の詳細は思い出せない。だがわたしは「字幕で吹きそうになったことだけしか覚えていなかった映画なのだから、見ようと思わず、そっとしておこう」と、考えることにした。