スーパーに、ティッシュペーパーを買いに行くという、夢のない用事で入店すると、店内アナウンスが「ボジョレーヌーボー発売日です」とのこと。
わたしは80年代後半から、おそらく合計で7年くらいは会社勤めをしていたが、それはバブルまっ盛りから、急激にしぼんだ日々を肌で実感できた時期にあたる。人は夜中にボジョレーがどうのと(当時は「ボージョレーヌーボー」と、いまより長い発音が主流だったが)、集まっては騒いだ。ワインそのものや宴席の予約などはあたりまえのことで、酒屋は早くから色めき立っていたものだ。
スーパーの店内アナウンスがなかったら、ワインが出ていることにも気づかなかったと思う。言われたからといって立ち止まって買ったというわけでもないが、あの当時の賑わいを覚えているだけに、世の中の扱いには隔世の感がある。いまの若い世代は、戦後しばらくはバナナが高額だったこと、たたき売りをショーのように見ながら値段が下がるまで待って買ったなどとは信じられないわたしと同じような感覚で、ボジョレーの当時の賑わいを聞くのだろう。
当時から、やりすぎ、騒ぎすぎと言う人は大勢いたが、それでも雰囲気に飲まれたい人がたくさんいたのがバブルだった。