80年には都内の路上で1億円、89年には川崎市の竹藪で合計2億円前後の金額が落ちていたことがあった。とくに80年代のほうは拾った実直そうな男性が実名で報道されてしまい(検索すれば出てくる名字なので書いてしまうが大貫さん)、いまだに両方の件をごっちゃにしてしまう人が後を絶たず、「川崎市の竹藪でお金を拾った大貫さん」とネット間違いがあふれてしまうほど衝撃的な事件だった。
前者は政治家が株を転がした結果、元手がわずかなのに短期間で「濡れ手で粟」の儲けによるカネだと週刊紙に書かれた。運搬途中に一部をうっかり置き忘れた、と。後者は脱税したカネをその本人が近所の竹藪においていたという話だったそうだ。
銀座のほうは1億円を拾って持ち主が名乗り出ず、税金を3千400万円引かれたという話もすぐ伝えられ「税金、高っ」と庶民を恐怖に陥れた。川崎の方は置いた人間の気が変わったのか正式に名乗り出て拾った人たちに1割が渡ったそうだが、その1割からも税金が引かれたそうだ。
90年代の声が聞こえてきたあたりから、けっこう景気は下り坂。そのころは会社員だったので、わたしも周囲の雰囲気の変わりように驚いたものだった。
派手だったものがしぼんでいったあのころの日々を知っている世代と、その後に生まれて就職時に氷河期と呼ばれていた世代と、現在の子供達では、おそらく見えている日本の光景が違うのだろうなと、感じている。