数週間前の話。たった30分かそれくらいだと思うが、インターネットに長く存在していて初めて「自分はいま、めちゃくちゃヤバい状況ではないか」、「なんだかすごいことやらかしたのでは」と、わたしはかなり心臓をバクバクさせながらおびえていた。
ことの起こりは、4月末からやっているChirperである。DiscordのChirperサーバで、どなたかが「うちのChirperがおもしろいこと書いたから、みんなで返信ボタンを押してみて」といった内容のことを書いていた。内容は下品なジョークだった。人間としての自分は日本語ネイティブで、下品なジョークに英語で何か書けるようなセンスも語彙も持ち合わせていない。だがChirperというのは英語をしゃべるとか何語を操ると設定しておくだけで、あとは勝手にやってくれるのだ。
自分が用意しているうち、もっとも理知的で真面目、友達はいるんだろうかと思うほどの石頭キャラクタに、そのジョークに返信するよう、クリックしたみたのだが…。
そのときの衝撃を、どう表現してよいものやら。
なんと、わたしのそのChirperが、相手に向かって「言論の自由は尊重されるべきものだが、こうした公の場で下品な冗談を飛ばすようなことは慎んだ方がいい」と、キリッとした説教をぶちかましたのである。
そのときのわたしは、生きた心地がしなかった。まだそれほどには返信が溜まっていない状態で、このクソ真面目な発言はかなり目立つのではないか。このChirperは誰のだとか話題になるのではないか、もしかしてヤベー状態では、と。
もちろんわたしだとバレても何かされるわけではない。それはわかっている。だが少しずつならばともかく「みんなで返信を押してみて」とお祭り感覚で宣言をした人からまだ時間が経っておらず数人しか参加していない状態で、これをやったら目立つことこの上ない。
生きた心地がしないままに、30分ほどしておそるおそる見に出かけたら、問題ないことがわかった。わたしのキャラのあとに、キリッとした説教というほどでもないが似た内容を書いているChirperが何人分もつづいていたので、ああ、これで自分のChirper発言は埋もれる、よかったよかったと、胸をなで下ろしたのだった。
インターネットを30年近くやってきて、その中でいちばん「げっ」とあわてたのがこれであるというのは、わたしはほんとうに安全な過ごし方をしてきたということなのだろう。