かつては月に1回くらいデパ地下の見回りを楽しんでいた新宿。文字通り目をつぶってでも目的地に行けるほど地下街には慣れていたが(スマホでメールを読みながら伊勢丹から小田急まで地下を歩いてしまってから、われながらあぶないと実感した)、それもいまは昔。西口で京王の食品売り場を少し見るだけで疲れてしまった。駅構内も通路も、至るところで工事中なのだ。
京王百貨店での駅弁大会のほか、何カ所か見ようかと考えていた場所もあるのだが、人が多くて疲れてしまった。それに以前は必ず立ち寄って楽しみにしていた小田急本館の食品売り場もいまはない。道を渡った別館(ハルク)に食品売り場は同居となり、昔の面影がないのだ。
けっきょく、用事を済ませるとほぼ直線で高円寺に帰ってきてしまった。そして駅の南口にあるオーケーストアで少し買い物。以前は同じオーケーストアでも高円寺店はこぢんまりしていて混んでいると思っていたのだが、新宿の帰りならばどこも混雑に感じない。
支払いしようと残高を見たらPayPayがぴったり2000円だった。端数がまったくなくて、気持ちよかった。こんなこともあるのだな。
高円寺南口の「ジュンホンマ」の前を通り過ぎる男女の会話を耳にした。
女「ケーキ屋さんだっ♪」(かなり素朴に、うれしそうに言っていた)
男「あ、ほんまや」(ごく普通の音量)
…ふたりはそのまま無言で去っていった。
あれは、ダジャレだったのだろうか。ダジャレでも相手が何のリアクションもしないのは、関西っぽい人たちの会話としてありなのだろうか。それとも、まじめに「ほんとだ」の意味だったのか。——考えても仕方ないことだが、しばらく考えながら歩いた。答えが出るはずもなかった。