不心得者を退職させるにあたって、法の不備や判断の甘さで退職金が支払われることになったとき、しばしば「辞退させる」という方法が話題になるが、見ていて気持ちのよいものではない。
法の不備(減額またはとりあげる規定がない)については、部下の女性にメールでストーカー行為をはたらいた裁判官の例がある。審理が延びた数ヶ月のあいだに支払われた給与やボーナスを、返還するつもりはないと聞いている。いっぽう、2007年夏に発生した、交番勤務の警察官が一方的に思いを寄せた女性を銃で殺害して本人も自殺した事件では、勤務時の死亡として高額の死亡退職金が支払われれることになったが、加害者(警察官)側の家族が辞退した。
以上は、法の不備だ。だが相撲協会が大麻で解雇する日本人力士に退職金を支払うとし、本人の側に辞退させたのは、判断が生ぬるくて見ていられない。ロシア人力士の解雇者も出て、さんざん問題になってからもなお継続していた行為は、角界の信用を失墜させるだけでなく、自分たちの側(相撲協会側)をなめていたことにほかならないのに、本人が希望すれば退職金付き、というのだ。かっこわるいとしか、いいようがない。生ぬるい。
警察官が不祥事を起こしたとき「減給×ヶ月と戒告処分」などの判断が下されても、何割かの場合は本人が依願退職する。先日成田空港でいばりちらして、手荷物検査の係員にトレイをぶつけた警察庁のキャリアもそうだった。これは退職も含めた圧力があるのだろうに表現は「依願」だ。そして見た目は自主退職だから、どこへでも再就職できるという仕組みなのだろう。