たまたま近いからというわけではないと思うが、新宿が好きだ。落ち着くし、どこに何があるかわかっているし、自分が見て回りたい場所がどことどこかを考えて、短い時間で歩いてまわり、帰宅することができる。
かつては、この感覚は吉祥寺だった。だがお気にいりコースの出発点だった三越がカメラ屋になったし、伊勢丹はなくなったし(北口方面をまず右手から「三越、西友、リンデ…」という具合に、西寄りに歩いて伊勢丹や東急を見てから駅にもどってくるコースだった)、コースの変更を余儀なくされるうちに、行く回数が減ってしまった。伊勢丹跡地はコピスになったが、それが完成するまでのさみしかった期間のうちに、わたしは新宿にますますどっぷりと浸かってしまった。
池袋は苦手。思い出はそこそこあるし、ある程度までは地理も頭にはいっているが、時間があるときに積極的に出かけようとは思わない場所。
渋谷も、あまり行かない。ときおり講習会に出かける製菓学校が二子玉なので、乗り換えで使うことがあったが、ヒカリエは東急フードショーから駅を挟んで逆の場所、なかなか短時間に歩けない。
新宿は、安い店も高い店も適度にあって、食事をするにもその日の事情や気分で選べる。いろいろな人間の層に合わせた許容度が高い街ではないかと思う。六本木などは普段着で歩いているとちょっと自分が浮いている気がするが、新宿はどんな人でもすっぽりと受け容れる。
たとえば日本橋あたりなら、服装からしてなんとなくビジネスの人が多いし、店もそれなりにビジネス向けが多そう。用事を終えて食事でもしようかというとき、ぶらりと歩いてよい店に巡りあう確率に賭けるより、事前リサーチが無難かという気もする。
こういったことのすべてを「慣れ」といってしまえば、それまでかもしれないが。慣れたいと思うほどには出かけない街も存在する。
そういえば、危険な「慣れ」…。
危なっかしいのであまり偉そうなことは書けないが、わたしは伊勢丹から小田急まで地下道を歩いていて、iPhone操作をしながら周囲をいっさい見ず「いつの間にか到着してしまっていた」ことがある。自分が歩行者で、周囲も歩行者で、ほんとうに運がよかった。気をつけねば。
…また近いうちに、きっと新宿。