今日は「忘れられない一冊」という、以前から読みたかったが書店で見つからなかった本(というより書籍名だけうろ覚えで出版社も覚えていないという探し方にも問題があるのだが)が通販で届いたので、薄いこともあり、一気読みをしてみた。
数えていないが50名くらいの文筆業もしくは著名な方々が寄せた文章をまとめたもの。知らない署名も多く出てくるので、こういう本をたまに読むと読書欲が刺激される。さっそく購入予定リストがふくれあがった。少しずつ読んでいこう。
さて、有名人でも何でもないわたしの思い出の本などを聞いてくれる人は誰もいないので、勝手に書いておくことにする。よく読んだのは「クレーヴの奥方」で、青柳瑞穂訳の新潮文庫版だったと思う。
フランスの宮廷の内部を綿密に描き、主人公とその思い人など中心的な数名を除いてはほとんど実在の人物、そして描かれている事件なども歴史の本に出ているような事実に即している。ただ主人公たちの主軸となる流れ(夫がいるのに美しい男性にひと目ぼれ、男性の側もひと目ぼれ、ただし時代が時代であり、同室で談笑するのがせいぜいで、ふたりきりで親密な会話をするほど大胆な展開になるのは、ほんのわずか)のみがフィクション。
この話、この数百年の読者がどこに惹かれてわくわくしているのかはわからないが、わたしというひねくれ者が大好きなのは、最後の一行である。読んだ人にしかわからない、その一行。わたしの心に「ざまーみろ」という言葉が最初に浮かんだのは、世間的には汚れなき年代と思われている高校一年か、それくらいのころだ。そのあとで何回この本を読んだだろう。ざまーみろ、やっぱり○○ってこの程度だ、ふん、勝ったぜ、と…わたしが何に対してそう思ったのかは、ぜひ一冊お読みください。