ついに、くるところまで、きたか…。正直、こういう話題はとりあげるのも苦しい。
世の中の貧困は増えるいっぽうで、富はごく一部に集中。そしてヨーロッパはこの数十年でビザなし移動が可能な地域が増え、人は移動しやすくなっている。新天地を目指して北上してくる人々がたどりつく場所のひとつが東欧で、なかでもハンガリーは玄関口のような位置づけになってしまっているらしい。困りきったハンガリーは隣国セルビアを経由して入国し難民申請をおこなう人々を防ぐため、高さ4メートルのフェンスを計画中という。
asahi.com 2015.06.21 難民流入防止フェンス、ハンガリーが計画 EU側は批判
実施されれば、北上してきた人々はセルビアから動かずそこでとどまろうとする可能性が高い。セルビアは豊かな国とはいえず、ハンガリーの計画に対し反発がすでに起こっている。
それにしても…
> ハンガリーによると、難民申請のために入国した人は今年は5カ月で5万3千人を超え、2012年の25倍に急増している。
…この数字を思えば、ハンガリーの悲鳴も、無理なきもののように感じられる。ネット検索によれば人口は2013年現在で990万人弱とのこと。そこに1ヶ月あたり1万人の難民申請がなされたら、たまったものではないだろう。
ただしハンガリーが加盟しているEUとしては、フェンスで物理的に防ぐことには批判的立場。他のEU加盟国とのあいだで難民割り当ての方針を提示しているが、ハンガリーはこれを受け入れていないとのこと。
さて、たいへん不謹慎ではあるが、お許し願いたい。
近未来を謳ったサイエンス・フィクション映画などで、病原体に襲われるなどして凶暴にゾンビ化した人間たちを入れないため周囲に高い塀をめぐらせ、内側では未感染の人々が城塞都市のように暮らす描写は、たびたび出てくる。近年ではブラッド・ピット主演の「ワールド・ウォーZ」がそれだ。
今回のハンガリーの件では、どうしてもこういったシーンを、連想してしまう。
もはや、物理的に人の流れを遮断する、もしくは内側から出ないようにして暮らすというのは、笑い事ではなく身近なところまで迫っているのかもしれないと思う。そして守られて内側に暮らすのは先進国の中でもとくに富んだ人々。こうしたことが起こりうる精神的な土壌はもう以前から、おそらく何十年か前から、人々の中に培われていて、それを実行に移す移さないは、ひとつのちょっとしたきっかけの有無で決まるのかもしれないと、そんな風に考えてしまう。
自分はいったい、そして日本はいったい、そのときどんな立ち位置にいることになるのだろうか。