子供のころ、おそらく当時50代かそれ以上だと思うが、周囲の大人たち(とくに女性)の体からサロンパスのようなものの匂いが漂ってくることがけっこうあった。なかには自慢するかのように「ほら、こんなに貼ってるよ」と、巨人の星の大リーグボール養成ギブスかと思うほど大量に、両肩から肘にかけて、そして胸と背中の一部にも貼られた湿布を見せてくれる人すらいた。
皮膚がどうかしてしまうだろうに、効かなくなってしまうだろうにと、漠然と思ったが、最近まで忘れていた。自分には関係がなさそうだったからだ。だがその時期は、だんだんとわたしにも近づいてきている。
先週から少し気配を感じていたことだが、この数日、かなり上半身が痛んだ。原因はわかるようなわからないような、そして今日から急に楽になったのもどうしてなのかは不明だが、とにかく、たいへんだった。いちばんひどかったのが左の肩のつけ根と右手首で、どちらにしても、体を起こして立ち上がる場合に支えとして必要な場所だ。昨日くらいからは、あぐらをかく姿勢から交差した足首を利用し、足だけで立ち上がることができないかと訓練まで進めていたが、今日になって急に楽になったので、もう訓練をしなくてすみそうだ。
今回は膝に関係はなかったが、よくテレビのCMで「膝がつらい、階段がつらい」とか、「雑巾をしぼるのがたいへんなほど手が痛い」などの描写があるが、あれを見て実感がわかない人はまだまだ若いと思う。わたしは今回、右手で水道の蛇口をひねるのも正直つらいと感じたほどだった。
昼間はどうしても、つらいと思っても体を動かす。寝ているわけにはいかないからだ。痛みが悪化しはじめた初期のころ(火曜日)は買い物にもでかけ、たくさん荷物も持った。それで状態が悪化した可能性もあるが、昼のうちは痛いと思っても忘れてしまいがちだ。
この数日は、夕方以降、急に「ずきんずきん」と、痛くなってきて、もっともひどかったのは「そろそろ寝るか」と横になったとき。痛くてどちらを向くこともできない。だがわたしは仰向けになって寝る習慣があまりなく、どちらかといえば左肩を下にしたときが楽に寝られる。今回はそういうわけにもいかず、寝ようと思っているため気を紛らわす用事も何ひとつ思い浮かばず、ひたすら眠りがくるのを待っていた。そして朝になればなったで、肩と手首の痛みはひどくなっていた。
もう、とにかく昼間だけでも気を紛らわすしかないからと、今日は外出の予定を複数詰めこんでいたのだが、午前は思い直して、「睡眠不足による体調不良も原因かも」と、ぼけーっと寝転んで過ごしてみた。おかげで少し楽になったので、さて出かけて気を紛らわすかと思ったら、東京近郊にお住まいの方はご存知と思うが、午後に1時間くらい「なんじゃこの雨は」の天気になった。雨音と雷鳴を聞いているうちにけっきょくどこにも行く気分ではなくなり、午後ものんびり過ごした。
するとどうだろう。夕方になっても、何の痛みももどってこなかった。肩も手首も、それ以外の場所の痛みも、なにも。
けっきょく睡眠不足だったのか、なんだったのか。
あの痛みは、また突然やってくるのかどうか。
ひとまず、湿布の買い置きだけは潤沢にある。どうしてもあの痛みがくるというのなら、受けてた根羽。