日本はインターネット人口の多い国だという認識はあるが、これまで漠然と「とりわけ炎上が起こりやすい要素がある国ではないか」という印象をいだいていて、それを検証してみようと思ったこともなかった。ネットでの「慣れ」が足らない状態で「手段」(パソコンやモバイル機器)を突然に手にしてしまった人たちが大勢いるのだから、老若男女を問わず、日本には「ネットで炎上しやすい要素」がたくさんあるのだろう、と。
だが、よく考えてみると、それはどこの国でも同じかもしれない。このところ大きな事件はネットでまたたくまに増幅され、目も当てられなくなる事例が増えている。
米国シンシナティの動物園で、人気者のゴリラが射殺された。理由は来園していた幼児がゴリラの目の前に落ちてしまったから。ゴリラは幼児に触れた。万が一にも命を奪うことがあってはと、射殺が選ばれた(麻酔では効いてくるまでに間に合わないからだそうだ)。
その後、人気者のゴリラを悼む人々のうち、一部が、幼児を連れていたのは誰かという方向に目を向けた。そしてここから先が怖いのだが、本人かどうかは確認がとれないが母親を名乗る人物がフェイスブックに「子供は怪我をしたけれど無事です。きちんと見ていたつもりでも、やはりそういうこと(子供が落ちる)は、起こります」と書いたところ、読んだ人々の反応がすさまじく、その人物はたちまちのうちに投稿はもちろん姿を消してしまった。
参考: Washington Post 2016.05.31 ‘Zoos aren’t your babysitter’: Parenting critics flay mom after gorilla shot to protect her preschooler
場所がFacebookであるため、投稿者の名前は実名である可能性がきわめて高い。いくつかのメディアがすぐ、未確認ではあるのだが、その名前を掲載したらしい。たちまちそれがネットで拡散され、同姓同名の人が嫌がらせや脅迫のメッセージを受けたのはもちろん、幼児の通う幼稚園のものであると推測されたFacebookページは、閉鎖に追いこまれた。
正気の沙汰ではないが、これは実際に日本でも起こっているし、世界的に起こっていることなのだろうと思う。
わたしは今日、北海道の小学生が山中で行方不明になった事件で、新たな情報はないかと検索をかけたところ、いかにも扇情的な長いタイトルのブログがいくつも引っかかった。アクセス稼ぎのため内容はほとんどないのにタイトルだけ扇情的にしているのだろう。クリックしないほうがよいが(←設置者がアクセス数で小銭を稼げるシステムのため)、数あるうち、ひとつだけ選んでクリックしてみた。やはり内容はなかった。
人気者のゴリラが亡くなった。とても残念だが、その幼児の親を特定しても、ゴリラは帰ってこない。これだけはたしかだ。