高円寺駅近くの商店街では、週替わりに催事をおこなうスペースが増えてきた。決まった店舗と契約して家賃収入を狙うよりも、テーブルだけ用意してあとは週替わりにテナントが来てくれたほうが楽なのだろうと想像する。借りる側にしてみれば改装の時間も手間も要らずに短期間の開業ができ、貸す側にとっても、長期の家賃収入を期待したとたんにいきなり退店されてしまうリスクも低い。
そんな簡易ブースのひとつで、このところ「花畑牧場」の商品を見かけることがある。
花畑牧場といえば、かつて通販でも「買えない」と話題になり、デパートの催事では行列。大騒ぎだった。だが別に味が落ちたわけでもないだろうし人が生キャラメルを不味いと思うようになったわけでもないだろうに、いまはこうして商店街の週替わりブースに、立ち止まる人も少ない。
珍しく、なくなったのだろう。
よく考えたら砂糖と牛乳で作れるはずだと、気づいた人が多かったのかもしれない。あるいは自分ではそれを作らないにせよ「作れる味だと誰かが言っている(つまり希少価値が減った)」と思うようになったのかもしれない。
そもそも行列は、なぜ起きるのか。起こそうと思って起こせるものではないと思う。中には見返りを求めて(広告業界やアフィリエイトの個人が)宣伝することもあるかもしれないが、なかなかそれだけでは大ヒットにはならない。自主的に話題に乗って宣伝している立場の人が現れてこそのヒットだ。おそらく幅広い層の人々に「何だろうそれ、どんなものなんだろう」と思わせる新しさのようなものがそこにあるからこそ、人は買って手にしてみたいと思うのだろう。
思い出せる範囲で、行列もしくは品薄になった話題の商品を書いてみる。
ナポリアイスの「pupu」、食べるラー油のブームによる各社商品(中でも桃屋とペンギン食堂)、クリスピークリームドーナツ、クロワッサンたい焼き…うむむ、意外に、思い出せる物が少ないな。ないはずはないが、人の記憶とはいい加減なものだ。
人気が出て大量生産をしたために廃れてしまった商品も、なかにはあるかもしれない。いっぽうで、味も製法も変えずにづっとつづけているものもあるはずだ。わたしは自分が美味と感じる商品を、ひそかに買い支えて、応援していきたい。