よかったことがあるとしたら、投票率である。前回より上昇した。前回は救いもなく低かった。今回は推定で59%くらいだったようだ。
今回ほど悩んだ選挙はなかった。入れる人は決まっていた。選択肢がなかったからだ。だが入れたくて入れたのではないし、納得して入れたわけでもない。こんな気持ちで投票したのは、少なくとも都知事選に関しては、初めてだった。
だがこんな思いを経験したのはわたしだけであるはずもなく、何万人、何十万人もの都民が同じように悩んで一票を投じたはずだ。理不尽だと思いながら、でも棄権をするわけにはいかず、投票した。宇都宮さんが今回も出てくれたら入れたかったと考えた都民は、多いはずだ。
そして今回の民進党が用意した候補者(鳥越氏)が、もし、舛添前都知事が辞めることになりそうだと予測できたその日から秘密裏に政策や対策を練っていて、発表時には「準備は万端です」と晴れ晴れしく全員が胸を張っていたのであれば、「こりゃすごい、よくぞ直前まで隠し通せた」と感心したところであるし、有権者の何割かは民進党と鳥越氏を見直したと思う。だが、ご本人は正直に「参院選の結果を見て、出なければと思った」と言い出す始末。政策はもちろん選挙のスピーチ対策も、テレビ以外の場で大勢の民衆をつかむ話術の訓練も、何もできていなかった。ようするに「今回は知名度で勝てるだろう」程度に民進の「誰かが」かるーく判断した結果が、最初から、都知事選の告示の日からずっと、野党を応援したい有権者のあいだに暗い影を落としてきたのだ。
わたしは鳥越氏への好き嫌いや、ジャーナリストとしてどうかという話をしているのではない。民進は、そしてそれに乗った野党各党は、都民の思いを軽く考え、政治家への道に進むにはあまりに急であり畑違いの人に、準備期間もなく見切り発車させた。それだけ焦っていたのだろうが、どうしても小池氏は嫌だ、増田氏も嫌だ、阻止するために鳥越氏しかないと、有権者もまた袋小路に追いこまれた。
民進党に今後があるのであれば、二度と、ぜったいに二度と、下準備のできていない候補を呼んでくるなどという、アホなことはしないでいただきたいし、ほかの野党も民進党につきあってやる必要はないと思う。
わたしはいま、誰に対して怒ったらいいのかわからない、払いのけられない重苦しさに、どっぷり浸かっている。