5年前に、義父が亡くなったことにより急いで駆けつけた盛岡で、一度にたくさんの買い物をしなければいけなくなったとき、かなり苦労をした。それ以前に何度か訪れて覚えていた町並みでは、もう少し商店が多かった。義母は呆けていた上に、それ以前に住んでいた土地から数年であったため、盛岡のどこに何があるかを把握していない。手探りで、足を棒にして探しまわるしかなかった。家は認知症に特有のゴミ屋敷で、不要なものばかりたくさんあり、日用品がなかった。あるいは不要なものと有用なものが同じレジ袋にまとめられているなどして、探すことができなかった。
そのとき、盛岡ではバスなどで行ける場所に複数の大型イオンがあり、人々はそこで買い物しているのだと聞いた。葬儀の準備が郊外だった家族はタクシーで近くまで出かけてあれこれ買うこともできたようだが、ゴミ屋敷に義母とふたりで過ごす時間の多かったわたしにはそれもできず、近所でどうにか買い物をした。クロステラス盛岡と、とくにその中にある100円ショップには、どれだけ世話になったかわからないほどだ。
そういえば、それ以前(15年くらいは経つだろうか?)のことだが、家族が日帰りの用事で群馬県の太田市に出かけることになった。わたしは子供のころの記憶で「駅に隣接したビルがあって、ご飯など食べられるはずだから」と伝えておいたが、帰ってきた本人が言うには、まったく寂れていて何もなかったという。驚いたが、数年後にあらためて人から聞いた話では、やはり市内に大型イオンができたからという話だった。
さて、このふたつの話を思い出したのは、岐阜県の大きなビルがかつて100店舗もはいっていたのに現在は無人のタマネギ売り場だけが残っているという話を読んだからだ。
LCワールド本巣の生ける廃墟っぷりが凄い。107テナントあったのが、本館では食品スーパーの1テナントのみに。そのスーパーも営業を大幅に縮小し、無人でたまねぎを売ってるだけ。たまねぎを売るためだけに巨大モールが開いてるという不思議。 pic.twitter.com/VVt3uixSUF
— よごれん (@yogoren) 2016年9月10日
これも、どうやら「イオン」がらみらしい。
そういえば数年前にいったんは「廃墟」で話題になった滋賀県のピエリ守山も、もしやイオンが近くにできたことが影響していたのだったか(^^;。
幸か不幸か、駐車場代が家賃なみに高い東京23区西部に住んでいるわたしは、イオンと名のつくものは、スーパーも大型複合店舗もどちらも知らない。ただ、どんどんと商品の仕入れがイオン系列になっていくスーパーが増えていくことで、影響力がはかりしれない存在なのだろうと実感しているが——。それにしても、できたとたんに周囲の店から客をぜんぶ奪ってしまうその破壊力(言葉は悪いかもしれないが)の裏には、やはり消費者がそれを支えていく「魅力」が、あるのだろうか。
ドンキホーテは人気があるが深夜営業されては困ると、「買いに行きたい、でも自宅近所にできるなら反対」という人が多いと聞く。イオンはどうなのだろう。よほど周囲が開けている場所を選ぶということかもしれない。
いずれにせよ、いまのところ、うちの近所は小さな商店もまだ多少は残っていて、皮肉なことに「サザエさんぽい、なつかしいような風景を残していくのは東京都」ということになるのかなと、ぼんやりと考えている。