大麻には痛みを抑えるなどの効果があるとされる。ならば一律に禁止ではなく許可を受けた人にだけは(おそらく乾燥大麻をタバコのように吸引する形で)使わせたらどうかと、考える人がいること自体には、何の疑問もない。
ただ、本来ならば有害成分を除外し効能だけ強化したものを体内に入れるべきという考えから、世界の各地で何百年ものあいだ「医薬品」というものが発達してきたわけで、それをあえて現在になり、副作用が起きやすいであろう未加工状態(植物)で許可すべきというのは、リスクが大きすぎるものと思われる。
未加工状態の大麻を医療用にしたいという場合、おそらくもっとも理想的(もしくは「無理からぬ」)事情の具体例として思いつくのは——使用したい人が医薬品がなかなか手にはいりにくい遠隔地に住んでいて、ときおり医師や薬剤師に会うため街に出かけるのもたいへんな苦労がともなうため、緊急もしくは予備の手段として自家栽培の大麻を許可してほしい、というものだ。
もちろん、使用者が街に出てくるのがたいへんと思うような遠隔地であれば、人の目が届きにくいということも同時に言えるわけで、その患者がほんとうに自分の分「だけを」栽培するかどうかはわからない。だがそれを言うなら自分で使用するためと断らずとも、勝手に栽培してしまう人が遠隔地に存在する可能性もまた、同じだろうと思う。そしてその人たちは医薬品の代替えとしてではなく、普通に販売することだろう。
また、推進派の人たちに少なからずあるのではと想像するのが「医薬品は誰かが暴利を貪っている」という疑惑。これは、一概にはそうとも言えないはずだが(研究費などをたっぷりかけた成果として医薬品が誕生するわけで)、なかなか世の中から払拭することは難しい疑問だろうと思う。実際に、かかった費用をあとから代金に充てているとは思えない逆の例(今後の類似する医薬品や後続品の開発のため前もって価格を添加)を価格の根拠として堂々と語る製薬会社も外国にはあったと記憶している。それは、少なくとも素人の感覚としては「ぼっている」と思われても仕方ないかもしれない。
ほんとうに苦しい痛みが「大麻でしか」緩和されない事例がもしあるのならば、大麻を本人に栽培させて未加工のまま使用させるのではなく、やはりプロが確認した方法で加工し、流通させるべきと思う。
だが、実際に「大麻でしか」緩和されない事例があるかどうか、わたしにはまだわからない。