数年前まで使っていた古いATOKでは、たしか手書き入力というものが搭載されていた。読めない漢字があると手でそれらしき文字を書くことで、ATOKが「これですか」と聞いてくれたのだ。あれは便利だった。
今日、読んでいた本にあった「斯界」という文字が読めなかった。昔の本、あるいは著者がご高齢なのか、たいして難しくなくとも文献名や固有名詞には読み仮名を振っているのに、「斯界の泰斗」などの表現は、漢字のみでどんどん遠慮なく目の前を流れていく。泰斗は「たいと」だろうが「斯界」はなんだと、ATOKで手書き入力を探したが、わたしの使っているバージョンには搭載されていなかった。
では、次にこれをどう調べるか——適当に読んでみてGoogle検索できるか、あるいはATOKで変換できるかで試してみようと考えた。紙の漢和辞書はとうにどこかに行ってしまったので、この方法しかない。
じっと斯界の斯の字を見て「なんかこれ、切るとか切られるとかいう雰囲気があるから、きかいと打ってみるか」と、打ちながら変換候補を探した。すると候補が下の方にあったので、それを選ぼうとしたところ、ATOKが「お客さんこれは”しかい”の誤読ですよ」と(もちろんお客さんとは言わないが)すぐさま指摘してくれた。
読みがわかったので「しかい」で変換させて検索し、無事に意味をとることができた。
手書き入力を復活させてくれたほうが便利なのだが、しばらくは「適当に読んでATOKに教えてもらう」方式で、やってみようと思う。
なお、パソコン画面上やスマホなどで読めない文字をそのままなぞってコピペできる場合は、読み方がわからなくても問題なく検索できる。わたしの場合はパソコン以外のメディアだったため、読みが必要だった。