靴は通販、または量販店(衣料品や生活雑貨と同じフロアで隅っこにあるような場所)で買う。店員さんがいる店は苦手だ。実は服もそうだが、服の場合は普段着ならばスーパーやドラッグストアにあるTシャツという選択肢もあるので、靴屋ほど怖くない。
何が怖いかというと、現地での緊張感。店員さんがいるようなちゃんとした場所でものを買うには、まずはちゃんとした服装で出かけなければという思いがある。これと同じ理屈で、ヘアカットになかなか行けない。
不思議なもので、食品売り場であればどんな都市部でも近所でも、平気でスニーカーで出かける。おそらく店員さんは、わたしの見た目を気にせず売ってくれるという妙な自信があるのだ。なぜその明るさと強さが食品以外だと発揮されないのか、自分でもさっぱりわからない。
そんなわけで、楽天あたりでスニーカーを年に2足くらい買っている。安物を買って、くたびれてきたら捨てる。スニーカーと違ってサイズが合わないと苦労しそうなものに関しては、たまに近所の量販店で格安のものを買う。
前置きが長くなったが、この数日のことだ。外出後に膝というか脚というか、何やら痛いような日がつづいたので、スニーカーが古くなってきたのだと考えた。ちょうど楽天ポイントがあるので、楽天で安いのはないかと、夜中に見ていた。
普段からだいたい予備は1足くらい買ってあるのだが、就寝直前の夜中のことなので、玄関の靴箱にまで確認に行けない。買い置きの柄とそっくりなのも困るだろうからと、楽天の画面を見つつ「これと、これを近日中に買う候補に」と、目星をつけるだけにしておいた。
だがその候補の中に、とてつもなく見覚えがあるスニーカーがあった。
ぜったいに自分好みで、値段も安く、しかもこれからの季節に合いそうなものだ。
——どこで見たのか。以前に買ったことがあるのか。
自分が買ったことがあれば楽天の履歴にあるだろうと思ったが、見あたらない。では義母が施設にはいる前に、予備として買ってやったのかと思ったが、それにしても買うのはほとんどが通販なのだから、購入履歴にないのはおかしい。では、いったいどこで見たのだろう。
早く決断をしないと、2色あるうちの片方は入荷待ちで、もう1色もそろそろ終わりそうだ。早めに下駄箱を見よう——
そして朝になって、わたしは下駄箱を見てみた。
そしてその、楽天にあって迷っていたスニーカー2色の両方が、ほぼ未使用で下駄箱の奥にあったのには、さすがに笑った。もしやと思いパソコンから家族用の楽天アカウントを見ると、去年の晩秋にわたしの分として2足とも買っていたことがわかった。
なんとまあ、もう少しで、同じものを買うところだった。
おそらく去年の晩秋に到着した商品を見て、「この生地は夏向きだから、寒いうちは古い物を優先しよう」と思ったのだろう。今日の外出に履いてみたら実に快適だった。
買う前でよかった。買ってしまって届いてからでは、目も当てられない。