スペルというタイトルの映画はほかにもあるが、こちらは2020年のアメリカ・南アフリカ製作のサスペンス。有料チャンネルでの配信もおこなわれているが、Amazonでは現在プライム会員は100円とのこと。わたしは先日どこかで録画しておいたものを視聴した。
近年どんどんと黒人が主役または登場人物の多くが黒人という映画が増えている。だがマーケットとしてはかならずしも黒人向けというわけではなくて、これまで作品内で添え物のように扱われがちだった側が主役になっていることへの現代的な視点に立っていることが多く、個人的にはとても受けいれやすい。
この作品だが、かつて山奥の田舎で親に体罰などの虐待を受けていた男性が、街に出て自力で成功し、家族も持ったものの、田舎の父が亡くなったという知らせがあった。そこで家族みんなで、自家用セスナで出かけるところから話がはじまる。
導入部ですでに、黒人としては上流階級に属する彼らが田舎の人々を見下したような態度をとることはよくないといった家族内の会話が描かれるなどして、わたし好みである。
ところが、田舎の山奥までもう少しというところで燃料補給のため立ち寄った場所で、彼らは「田舎」の洗礼を受ける。自分たちよそ者、そしておそらくは階級の違いへの嫌悪だ。さらに、直後に生じた嵐のため、山奥でセスナが墜落。
物語の主人公である男性(一家の父)が目覚めたとき、そこはある家の2階だった。自分が監禁同様に手当を受けていることに気づいたが、家族のことは教えてもらえず、自由も与えられない。口答えをすると暴力的な態度をとられる。
夜間に様子を調べたところ、地域で信じられているフードゥーのまじないをする女性とその家族にとらわれていて、数日後である特別な夜に、何かが起こるということらしかった。
家族はどうなったのか。自分はどうなるのか。逃げ出せるのか。
血がたくさん出る場面があるため、そういうシーンが苦手な方にはおすすめしないが、話としては、昔ながらの映画ファンの予想を微妙にずらしながら、それでいて随所におなじみのものをちりばめていて、バランスがよく感じられた。「戦うとーちゃん」的なもの、「非科学的なものは信じないがそっちがその気なら」的な応用力が発揮される場面も。
終わり方は、悪くなかった。