軍事としては圧倒的に不利であったはずのウクライナが、コメディ俳優出身でメディアへの訴え方がうまい大統領の力もあって国際的に世論を動かし、大きく支持を集めている。滅多なことでは他国に介入しないスウェーデン、永世中立を謳っていたスイスまでもが、ウクライナに味方した。ロシアへの経済制裁は強まっている。
だが、気になることがある。各国に住むロシア人への嫌がらせや迫害は、おそらく深刻なはずだ。アメリカの知人らは、早い段階から第二次大戦のときに日本人、日系人だけが強制収容された歴史に今回のロシア人を結びつけて考え、深く案じていることがうかがわれた。
実際にアメリカの人たちがつづった何気ない表現、たとえば「街角でピロシキを売ってるロシア出身のおばあさんがウクライナを襲撃したわけではない」という言葉からも、おそらく事態は深刻なのではと感じさせられる。
芸術、スポーツ、学術などの分野でも、ロシア人の参加をどう考えるかは、それぞれの主催団体が頭を抱えていることだろう。たとえばあきらかに国を背負ってやってきている立場の参加者(その人の活躍がロシアという国に利する)と、個人の活動として参加している人と、本来ならば一緒くたにはできないはずだ。だがトラブルを防ぐために厳しく判断していくことが、今後は増えてしまうかもしれない。
心配なのは、日本語で「ロシア人へのヘイト」と検索しても、英語ほどには情報が出てこないこと。
日本人の多くは親子何代も日本という国に暮らし、外国との交流も少なく、自分たちだけで固まっていれば安全のように感じて外部のことに無頓着な傾向がある。だがひとたび何かあれば、日本人がとことん嫌われて誰からも相手にされない、手を差し伸べてもらえないという事態は、起こりうるのだ。
悪口を言われている国の人なら何かされてもいいかのような気持ち、見かけても軽く受け流すような態度は、きつく戒めておかねばならない。無頓着であってはならない。