好きな役者のひとりが、ジェット・リー。彼のアクションは素晴らしい。
その作品のなかでも、終盤で敵地に乗り込むシーンが好きなのが「キス・オブ・ザ・ドラゴン」だが、どこかのチャンネルでこれの後半をやっていたのを見たため、改めて考えてしまった。
…ストーリーが無茶すぎるというか、あり得なさすぎる。
前回から記憶していたのは「場所がパリで、出てくる人間がみんな英語って、なさすぎるだろ」という点だったのだが、今回はもう、ラストで適役のチェッキー・カリョが絶命するシーン。あれは、ない。ハリー・ポッター級の能力を持つ悪い魔法使いが呪いでもかけましたか的な殺し方である。それが作品のタイトルにもなっているわけだが、中国からやってきた警察官なら格闘技がすごくて、両手が思うように動かない状態でも即座に人の命を奪える鍼灸技術が……いや、それ、ないから。
見るたびにそれは思っていたのだろうが、それでも、乗り込むときのシーンがかっこよくて、そこしか覚えておらず、最後の最後でチェッキー・カリョが死ぬのを見ては、「それ、ないからー」というくり返しなのだろうと思う。
この作品は2001年だが、その4年後の「ダニー・ザ・ドッグ」のときは、見た瞬間から「こりゃ、ねーわ」と、さじを投げた。中国系の男の子が誘拐されサンドバッグと一緒に地下室に閉じこめられ虐待されるうちに、感情なく命令に従う殺人マシンに成長…しないだろーっ。普通、しないだろ?
このときは、このストーリーでも出演してしまうジェット・リーに驚いた。
娯楽と割り切るか。
あるいは、いくらなんでもアジア系への誤解(よく言えば誤解、悪く言えば蔑視)がひどいと憤るか。
このあたりの境目が、ほんとうに難しく感じられる。
ただひとつ言えることは、まるまる信じて頭に入れてしまう人が、どの場合でも一定数は存在するということだ。将来への影響を考えると、あまり軽くも考えられない。