Facebookには投稿に対してリアクションするボタンがいくつかある。そのうちのひとつが、big laugh (大笑い)の 😆 だ。
おもしろい投稿、楽しい投稿にこれを使うのは、ごく自然にことであるが、最近「どう考えても真面目な話題」に、これを押す人が大勢いる。これでは、笑いではなく嗤いだ。意図からも、数からも、これは暴力になりうる。
このところ連日報道されている俳優の元夫婦ジョニー・デップ氏、アンバー・ハード氏の裁判だ。かつて短い期間を結婚していたふたりは、離婚した。その後にアンバー・ハード氏がワシントンポスト紙の記事で、家庭内暴力の被害に遭ったと表現したために(誰によってとは書かれていないが)、直前まで結婚していた相手であるデップ氏が5000万ドルの損害賠償を求めて訴訟を起こし、それに対してハード氏が倍額で訴訟を起こして応戦している状況である。
数日前までは、デップ氏が「こんなことをされた、精神的に不安定で暴力もあったし、こちらを苦しめていたのはハード氏」だ」と連日証言。つづいてハード氏が「これこれこんなことをされた」と証言を開始。どれも笑える内容などないのだが、これらが記事になるとFacebookでリアクションの欄に 😆 があふれる。
デップ氏のファンらが中心ではないかと推測するが、ハード氏を映画「アクアマン」新作から降ろすようにオンラインで嘆願をしている人々もいる。その理由の一部には、離婚で手にした金額のうち多くを寄付すると言っていたにもかかわらず、さほどの額を寄付していないハード氏は信頼ができないというものも含まれているようだ。
だが、名誉毀損の裁判で、しかもまだ進行中のことであるのに、ハード氏をおとしめるような流れがあっていいはずもない。しかも、寄付すると言っていた額より実際がまるで少ないというのが事実であっても、それは家庭内暴力があったかないかとは関係がない。切り離すことがたいせつだが、ネット上ではすっかり、😆 で嗤うことにした人が、増えているようだ。
これは、数による暴力である。