フランスでも「チーズケーキ」

 外国語が自国語に影響を与えないよう努力をしている国、フランス。新語などはとくに、なんでもかんでも独自の言葉を使おうとする傾向があり、そうしたものをほんとうに若い人は使うのかなぁと感じることもある。フランスでの正式な名称が決まるまでにネット経由で外国から言葉がはいってきているわけで、若い人は先にそれらを吸収してしまうのではないだろうか。

 新語ばかりではなく、意外にあれこれ言葉がはいっているのかなと感じたこともある。以前に、フランスの人気ドラマシリーズ「バルタザール」のシーズン4をU-Nextで見ていたときのことだ。
 主人公がチーズケーキを食べたくなり、本来なら緊迫した情況下(外部から見れば人質事件)でありながら、「チーズケーキを犯人が要求しているからすぐ持ってきて」と警察に伝える。人質分までたくさんのチーズケーキがやってくる、という展開。

 ところがこのときの台詞も字幕も、英語と同じくチーズケーキとなっていた。フランス語ならばタルト・オ・フロマージュ、ガトー・オ・フロマージュなど、とにかくフロマージュを使って表現するのだろうと思っていたが、見事に違っていた。現物は画面に出なかったが、おそらくアメリカ風(いわゆるニューヨーク風)のものを英語のままチーズケーキと呼んでいたのではないかと想像する。
 ねんのためにWordhippoでも見てみたが、メインの回答例がチーズケーキで、その次に「何たらフロマージュ」という言葉が添えられていた。

 日本では外国語を抵抗なく受けいれつづけてきて、各国語を節操なく混ぜているため、混乱が大きい。たとえば製菓でよく出てくるカタカナ「アーモンド・プードル」は前半が英語のアーモンドで後半がフランス語(意味は粉)だが、フランス語ならプードルが先に来るので、もうめちゃくちゃである。製菓製パンに関してはもう、開き直って慣れてしまうのがいいかもしれないが、せめて正式な場で人に話すときは、何らかの統一感ある表現にする人が増えたら、聞く側にわかりやすいと感じる。

投稿者: mikimaru

2021年現在「バウムの書」、「お菓子屋さん応援サイトmikimarche」などのサイト運営に、力を入れています。 かつててのひら怪談というシリーズに参加していたアマチュア物書き、いちおう製菓衛生師の資格を持っています。 バウムクーヘン関連や、昔からの知人には、「ちぇり」もしくは 「ちぇり/mikimaru」を名乗っています。