8月が近づくと思い出すことがあれこれ増える。
時期が時期だけに、おもに歴史や戦争関係で考えてしまうことが多い。思い出は本であったり映像作品であったりもするが、とくに2010年8月15日にテレビ朝日で放送された “ザ・スクープ 消えた東京ローズを追え 戦後65年目の真実” は、見られるものならまた見たいと思うほどに心に響いた。何らかの権利関係があるらしく、番組のバックナンバーにも少しだけ紹介されているのみなのが残念だ。
戦時中、日本の近くにいた米兵たちに短波ラジオを通じて、故郷を思い出すような音楽やメッセージを流しつづけた女性たちがいた。米兵らは彼女たちを東京ローズと呼んでいた。
戦後、東京ローズとは誰だったのかという問いに、ひとりの米国人女性(日系アメリカ人だが日本滞在中に開戦となったので帰国できず)が、自分ですと答えてしまう。それが運命を大きく変えた日だった。
この女性アイバ戸栗(とぐり)さんは、複数いた女性のうちのひとりでしかなかった上に、米兵らがもっとも熱く噂していた声の人物とは異なっていた。だが戦後の苛立ちや怒りの矛先を求めていた風潮により彼女は悪意にさらされてスケープゴートとなった。日米それぞれの地において彼女は取り調べや裁判を受け、まずは現在のサンシャインシティにあった巣鴨刑務所で服役。その後、米国に帰国するも生まれながらに持っていた米国市民権を剥奪された上で服役。社会的な差別にも長くさらされ、市民権の復活までには30年もかかったという。
その番組では、米兵らが熱く語っていた魅惑的な声の東京ローズは誰だったのかなどにも言及していて、かなりわかりやすい映像作品となっていた。
あれほどの出来のものを当時だけの放送でしまいこんでしまうのは、なんとももったいない話である。もっと多くの人に知ってもらって引き継いでいくべきだろうと思うが、何かその年だけしか放送できないなどの制約があったのだろうか。