ある場所でのこと。別にタバコでも酒でもなく、年齢制限がある商品ではない。取り寄せでオンライン支払いをしたものを、最寄りの営業所に届けてもらうだけだ。何度か利用したが、最近「受け取りの際は身分証明書が必要です」とメールに表示されるようになった。
冗談だろうと、最初は思っていた。実際にメールの文面を見せたら本人と見なしてくれて何も言われなかったこともある。その代わりメールの文面にある受注番号などをきっちりと確認してから渡してくれた。だが先日の担当者は、名前以外の文面をまったく見ずに、それが身分証明書の名前と一致しているかどうかを見ればよいとの判断だったらしく、ほんとうに見せろと言われた。かなり驚いた。
料金はいつも1000円少しで、家族用の健康食品だ。これで、身分証明書(運転免許証のないわたしはマイナンバーカードになる)を見せろと。はぁ…?
これなら少し割高でも別の店で通販の際に一緒に買った方が気分がよい。
これで思い出したことがある。かなり前——20年以上も前だろうか。ある知人が「メールアドレスがほしい、少しネットが見られるだけでいい」と、どこの接続プロバイダに契約しようかと質問してきた。たいして使わないならば少額プランがあったソネットを勧めた。
その人は入会するつもり満々で、ソネットに入会の用紙を送ってもらったところ(当時は入会申し込みが紙だったのだろうか?)、驚きの事実が。クレジットカードを使わない場合は世帯主の名前とハンコをもらえと書いてあったそうだ。
いまならば、楽天のように審査が簡単なクレジットカードが手にはいる。だが当時は違う。その知人は転職期間中、しかもいったん実家に住んで今後を考えようとしていたときだった。ひとり暮らしなら世帯主は自分、実家にいる場合は親や世帯主ということになるが、その人にとっては苦痛でしかなく、ソネットに入会するのをやめた。
わたしはそれを聞いて代わりに腹が立ってしまい、知人のことではありますがと、ソネットに苦情メールを書いた。
初心者で、まずはメールアドレスが持てて、ネットは慣れるまでほとんど見られないから少額プランでいいという人は、せいぜい毎月1000円台〜2000円台ではないかと。それで成人している人に向かって「世帯主の名前を書いて押印とは何事か」と。
ソネットはすぐに返事をくれた。そういった案内やクレジットカード関連の業務はなんたらかんたらという会社にまかせているが、人を傷つけてしまいかねないことについて今後は配慮していく、といった内容だった。
そう、あの20数年前のことと、今回の「千円ちょっとの健康食品受け取りにマイナンバーカード」が、頭の中で妙に重なるのだ。数万円ならまだわかるが、杓子定規にもほどがある。
健康食品については似たような価格の店をどうにか探して、今後は利用しないつもりだ。