たいていのことは単複同形ですませてしまう日本語。友達という言葉も「達」が付くとはいえ、ひとりでも複数でもこれを使う。お子さん、同僚、警察官、そのあたりもすべて「どっちもあり」だろうから単複は気にしない。
それなのに、スーツである。suitはそれだけでセットなので(ジャケット、シャツ、ズボンなど、何らかのセットが揃っていて suit である)、suitsになったらそのセットが複数あることになってしまう。日本語としては最後が「ツ」のほうがまとまりがよかったのだろうか。明治時代の人にでも聞いてみたいものである(無理)。
a pair of trousers のように、上部でつながっている「ズボン」なるものをなぜか a pair of と表現するのは面倒だが、英語ではそうなっている。フランス語ではパンタロンという単数であるが、英語では、ズボンも鋏も a pair of という扱いだ。だが suit はその点、楽でいいはずだったのだが。
suits スーツ と複数形にしてしまった日本語の影響か、ある場所で 日本人らしき人が suitcase を suits case と分けて書いている例まで見かけてしまった。音としてスーツはsuitsだからそう置き換えたのだろう。ちょっとした勘違いであるが、スペルチェックにもこれは引っかからないので、各人が自分で気づくしかない。