何やら嫌だと思う言葉のひとつが、カスハラ。何やら語感が悪い。日本語の「かす」は人をけなすときにも使われる言葉であり、それを連想してしまうのも否めない。
それから、何にでもハラスメントを付ける現状なのだが、最初に話題になった言葉「セクハラ」はともかくとして(——英語でsexual harassmentは言える)、それ以外のハラスメントは文法的に言えない。sexualは形容詞なのでharassmentにそのまま付けて「性的な嫌がらせ」として意味が通るのだが、パワハラ、アカハラ、カスハラなどは、完全に日本語カタカナの発想。アカハラの academic は形容詞だと思う人もいるかもしれないが、もしこれを英語圏の人に聞かせたら、学問的なハラスメントという意味になるかと思う。学問の場で上位の立場の人間が下位の立場の人間にハラスメントをしているという意味にはならない。
名詞と名詞をつけて何らかの意味を持たせることは日本語(とくにカタカナ表記の言葉)においてしばしば見られるし、英語はフランス語などの言語にくらべて多少はそのあたりが緩いのだが(フランス語ならば英語の of に該当するものを挟んで語順を入れ替えつつ長くなるような言葉も、英語はしばしば名詞を並べて表現できてしまうことがある)、その出現率や使用における許容度は、ゆるすぎる日本語の比ではない。日本語は先に使った者勝ちのような傾向がこの数十年で加速していて、日本語で言い換えできないようなカタカナ語を、なんとなくの雰囲気で定着させてしまうことが増えている。
ともあれ、東京都が条例を作ってカスハラ対策をおこなうというニュースは、内容そのものはよいのだが、カスハラという言葉がどうもいただけない。