2006年ころから数年にわたって発行されていたポプラ社の書籍で、「てのひら怪談」シリーズというものがある。以前にあったビーケーワンという会社とポプラ社の共同企画だった。ビーケーワンが原稿をネットで募り、作品を選んで、ポプラ社がそれを「てのひら怪談」として出版したのだ(原稿募集の初期のころはとくに出版という話はなく、作品が集まったのでそういうなりゆきになったと記憶している)。
わたしは当時あれこれとどん底で、応募したころ(夏)は元気だったのだが秋にさしかかったあたりから人生で初めての入院。なんと7週間。入院当初はネットを見ることもできずにいたが、家族がわたしにノートパソコンを差し入れしてくれて、休憩室にそれを持って出かけるようになってからはメールを見ることができた。するとわたしから返事がないので(参加者に片っ端から声をかけていたのだろうが返事をしない人間は少なかったのだろう)、ポプラ社が困っている様子が見てとれた。入院中ですぐ返事が書けないこともあると思うが話をぜひ進めてほしいとお願いして、あとは退院を楽しみに待つばかりとなった。
その後、後継の本も何冊か出て、ほぼ毎回わたしは呼んでもらえたが、1冊につき20名以上の参加があったため、印税計算と振込は、ほんとうにたいへんだったと思う。
さて、昨日郵便が来た。
数年ぶりに何冊か売れたらしい。金額を見ると出版当初の単行本サイズのようだ。まだ買ってくださる方がいたことに感謝。そして20名以上の人数で割り勘にしたため(提供した作品数にもよるだろうが)わたしの印税が20円だったことを考えれば、支払手数料を考慮するまでもなく人件費だけで赤字である。ポプラ社さん、ありがとうございます。